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13:その傷跡に芽吹く花

自己満足のPSO2チャレ小説最終話です。

1話から合わせて、全部で140KBのテキスト量…。
薄いラノベ1冊分くらいでしょうか。
この文章量にお付き合いくださった方に感謝……!

登場人物を二人に絞ると決めた段階で、基本視点になる一応の主人公は
自分が扱うキャラにと決めましたが、出来ればW主人公っぽくしたいな…と思っていたので、
エピローグの視点は全部「彼」です。

…後半から「彼」の視点が増えてきていたので、そんな意図は見透かされていたでしょうか。
物語通してみれば、自分の世界が動くのは「彼」の方なので、本当の主人公は
そっちなのかもしれませんね。

これで、しばらくはPSO2の普通の記事を中心に書いていくかと思います。
気が向いたら、今度こそ短編とか…また小説を書くかもしれませんが、
その時はまた、お付き合いいただけましたら幸いです。


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その傷跡に芽吹く花
エピローグ:その傷跡に芽吹く花



何度通ったかしてないチャレンジを終えた後は、いつも憂鬱な気分だった。
それは間違いなく、惚れた女を亡くしたあの時からだろう。


―――…もしも、あの日をやり直せるなら、彼女を絶対死なせないのに。


一人、閑散とした現実へ戻るたび、その気持ちが何度も何度も俺を責め立てた。
そんな時は決まって見も知らない他人に八つ当たりを繰り返したものだったが、
それでもチャレンジをやめられなかったのは、俺のトラウマのせいに他ならない。

「…ありがとう。君がいてくれてよかった」

今回限りの同行人が、そう言って笑った。
いつもなら一人で戻るその道を、二人で歩いているのが少し笑える。
俺がいてよかった、か……。
単純なその言葉で、少しだけ救われた気がした。

嗚呼、そういえば……心なしか気分も軽い。
訓練所を抜け、見慣れたチャレンジブロックのエリアまで戻ったところで、
普段ならささくれ立ってもおかしくない心は、不思議と静かな泉のように波風一つ立っていない。
それどころか、心から浮かび上がる感情は、久しく感じていなかった清々しさだった。

我ながら単純だな、と思う。
こんな事くらいで、長年悩まされた俺のトラウマは克服できてしまったのか。

彼女が今も生きていたら…と、あり得ないIFを何度夢想したかしれない。
叶うはずもない願い……それが、疑似的にでも叶ってしまった。
現実は何一つ変わっていないというのに、自分の中から何かが抜けていくように心が晴れやかで。
そんな単純な感情が、少し癪だ。

「君は…そういう顔もできるんだな」

流石に疲れたのか、少し掠れた声でコウが言葉を口にする。

「一体どういう顔だ」
「とても穏やかで、優しい顔だ」
「そりゃ聞き捨てならないな。俺はもともと穏やかで、優しい」

照れ隠しってわけじゃないが、どうにもこの男に言われると腹が立った。
惚れた女に似ているせいだろう。
だからいつも通り皮肉を返すと、コウが小さく笑って見せた。


嗚呼、もしお前が女だったら最高だったのに。

その笑顔に、ふとそんな事を思う。
もう一度、俺の人生のレールを切り替えた人。
きっと、今度こそ、大切に扱ってやれるはずなんだ。

そこまで考えて、あまりに馬鹿らしい発想だなと切り捨てる。

…違うだろう。
コイツが男だったから今があるんだ。
もしもこいつが女だったら…きっとまた、同じことを繰り返していたに違いない。
生物として女よりは多少筋肉質な男の身体が、多分…背中をブスリと刺されたあの瞬間、
生死を分けたに違いない。
こいつが女で、もしもまた同じことを繰り返していたら……たぶん俺は、もう二度と立ち直れなかった。

散々迷惑をかけられた。
これでもかってほど。
それこそ、死を覚悟したくらい。
二度とコイツとチャレンジを受けるのはごめんだと心底呪ったくらい。

…でも、終わってみれば最高の相棒だった。
一生消えないトラウマを克服する機会をくれた。

これで多分、俺はもう一度真っすぐに、自分の人生と向き合っていける。


最高の恋人が無理なら、最高の友にはなれるだろうか…?

再びよぎる無駄な想像を、やはりすぐに切り捨てた。
…こればっかりは、「そりゃごめんだ」と、すぐに結論が出てしまう。
こんな危なっかしい生き方を共にするなら、命がいくつあっても足りはしない。
力づくで言う事を利かせることも、唇を無理やりふさいで俺に従わせることもできない相手じゃ、
傍にいるだけで寿命が縮む。

「…ま、チャレンジってのがどれだけご機嫌なのかわかったところで……
 お前はもう二度とこの場へ来るな」

だから、嫌みではなく、俺にできる精いっぱいの気づかいを声に含ませて、そう言った。
そんな俺の似合わない言葉の意味に、この男なら気づくだろう。
コイツはたぶん、戦場になんか出ない方がいい。
何と返事を返すべきか迷うようなコウの仕草に、俺は構わず言葉を続ける。

「俺はな、コウ。昔お前と同じメディックとこの訓練を受けたことがある」
「うん…?」

何となく、コイツになら話してもいいかという気分になった。
トラウマを克服した証として、聞いてほしかったのかもしれない。

「いい女だったよ。惚れてた」
「…そうか」

俺の言葉に、コウは悲しそうに目を伏せた。
…察しがいいな。
過去形で語るその「女」が、もうこの世にいないことに気が付いているのだろう。

「ファングバンシーから俺を庇って、あっけなかったけどな」
「?! …それって―――…」

コウの表情が一瞬にして青ざめる。

「…ごめん」
「何が?」
「君を、そうとは知らず傷つけた」
「傷つけた? お前程度がこの俺を?」
「俺の行動は多分、君の傷を抉っただろう…?」
「…………」

まぁ、それは事実だ。
曖昧な笑みを返す。

「君が何度も俺に向けた感情は…そういう事だったんだな」

深々と頭を下げられて、なんだか少し馬鹿らしくなった。
別にこの男に謝ってほしくて話した話ではない。
単純に、ただ聞いてもらいたかっただけの話。
トラウマを克服したついでの、懺悔みたいなもの。
だから俺は、いつも通りの皮肉を少しだけ織り交ぜて……

「ああ、何度殺してやろうかと思ったことか」
「…………」
「―――…だから、もう来るな。
 惚れた女と似た奴が、目の前で死んだら寝覚めが悪い」

もう一度釘を刺した。
出来ることなら、アークス自体やめてくれれば、より安心なんだが……
そこまでは無理ってものだろう。
せめてこの場に、二度とこの男が間抜けな顔で現れないよう優しく言ってやる。

今にも泣きだしそうに顔をゆがめて……俺の言葉に返事は返さず、小さく頷く。
真剣に、優しい声音で話す方が、この男には効果があるらしかった。

左腕で、日常への帰り道を指し示す。
人の多い、アークスシップの中心部へつながるエレベーター。
それで、この訓練と短い相棒ごっこは終了だ。


「暁…? 右手はどうした?」


…けれど、俺の腕を見つめたまま、コウは目ざとくそう言った。

仮想から現実へ……もげた俺の右腕は、いつも通り所定の位置に収まっている。
ただ、予想した通り……神経が完全におかしくなっていた。
そこに存在するだけで、指一本動かせなくなった利き腕に、
俺自身は「まぁそんなものか」と、意外にあっさり納得できたものだったのだが……
生ぬるい環境で生きてきたこの男には、到底納得できる結末ではなかったのだろう。
今にも泣きだしそうだったその表情は一瞬のうちに消え去って、
苦い表情が浮かび上がる。

こいつの事だ、自分がチャレンジに付き合わせたせいで、俺が腕を潰したとすら考えかねない。
明確な言葉にこそしないが、表情が痛いほどにそう言っている。
……あんまり思い上がるなよ、雑魚の癖に。


しばらく俺の腕と顔色を交互に見つめていたコウは、ようやく息を吐いて、
エレベーターへと足を運んだ。
ほっと息をつく。
自分の無能さを知って、ここへ立ち入らないという判断をこいつ自身が下したとするなら
少し寂しい別れのような気もしたが……それも仕方がない事だ。

自分の身には負えない事だと判断するのも経験からくる立派な決断で、
今回に限らず、この先長い人生を生きていれば、そんな事は嫌というほど経験する。

…おっと、コイツの方が年上だったか。

なら、事の大小はあれど、俺よりそんな経験は何度もしてきている事だろう。
医者だというならなおさらだ。
…どれだけあがいても治せない患者がいるのと同じで、
現実には自分ひとりで出来ることなど限られている。

―――…これで、サヨナラだ。




「…また来る」




次の瞬間返ってきた言葉に、眩暈がした。

「おい、人の話を聞いてなかったのか、クソ野郎」
「君の腕はまだつながっている。神経をつなぐ手段はあるかもしれない」
「…俺の診察にくるって意味か? 医者モドキ」
「モドキじゃなくて、医者だ。 それもあるが―――…」

切られた言葉に、嫌な予感が全身を駆け抜ける。

「チャレンジにも、また挑むよ。
 そのシステムがわかれば、君を治す手段が見つかるかもしれない」

そらきた。
お前、最初の目的はどこへ行った…?
前線に出たくてこの訓練を受けにきたんだろうが。
メディックとして動くなら、まだチャレンジより前線の方が安全だろう。
どうしてもというなら、せめてそっちへ行ってくれ。
お前の失態は全部見なかったことにして、なんなら紹介文だって書いてやるから!

だが、どんな言葉で伝えれば、この男は俺の言葉を聞き入れてくれるのだろう?
……きっとどれだけ言葉を尽くしても、無駄な気がした。
コイツと話をしていると、心底疲れる。
俺は返す言葉に困って、天を仰いだ。

「―――…そうだ、今度来るときは見舞いの花くらい持ってくるよ」
「俺はベッドに張り付けられた重傷患者か?」
「言いえて妙だな」
「ほざけ。いらねぇよ。お前とは鍛え方が違うからな」

俺の言葉を聞いているのかいないのか…コウは、ハハハと声を上げて笑った。
いよいよその舐めた態度がむかついてきて、眉を吊り上げる。


「諦めてくれ、性分だ」


俺の不機嫌を察したのだろう。
いつもの言葉を残して、俺の返事も聞かぬまま、コウは早々にエレベーターへ飛び乗ると
このブロックから姿を消す。

クソ、言い逃げか。

折角の気分が台無しだ。
行き場のない苛立ちに、心がささくれ立つ。


 (C)SEGA

けれどきっと、そんな俺の感情などお構いなしに、明日にはあの男が呑気な顔で、
見舞いの花を片手に再び俺の前へ現れるのだろう。
花はたぶん、白だろうなと想像する。
何も考えていないアイツと同じ、真っ白な花に違いない。

「次に顔を見せたら、一発殴り飛ばしてやる」

利き腕じゃないんだ、手加減はしてやらねぇぞ。
受け身も取れず、吹っ飛ぶコウの姿が目に浮かぶ。


……そう思うと少しだけ、明日が楽しみになった気がした。
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名前 :コウ
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ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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