FC2ブログ

10:戻らぬあの日をもう一度

自己満足のチャレ小説10話目でございます。

そろそろ物語も終盤です。
今回はM7踏破までですが、ミッションにはあまり触れてません。
9話と一気に読んだ方がいいかな~ということで、2回目の更新。

10話は短い、幕間のような話なので、気楽にどうぞ。
長く引っ張ってしまった、「彼の過去」についてのお話です。
今回は、最初から最後まで視点が「彼」になってますよ!

勿論、書きためていた分はなく…。
次の更新がいつになるかわかりませんが、完結までもうしばらくだけお付き合いくださいませ。


↓↓ 折りたたみ記事で、小説へ



その傷跡に芽吹く花
10:戻らぬあの日をもう一度



その女は、特別美人ってわけじゃなかった。
いや、むしろ今まで抱いた女の中じゃ、ダントツで下から数えた方が早かっただろう。
でも……いい女だった。

初めて心の底から抱きたいと思ったくらい。
リップサービスでもなんでもなく、恋を覚えたてのガキみたいに、
愛をささやいてやりたいとも思っていた。
柄じゃないが、こいつのためになら、誓いを立ててやってもいい。
こいつのためだけに、これからの人生全部、俺の全てをくれてやったってよかった。

「若かったな……」

年齢だけで言うなら、今でも十分若い。
だがあの頃は、もっと稚拙な脳みそだった。

「・・・・・・・・・・」

トラウマだな、と自分でも思う。
コウが言葉を繰り返すたび、あの日の事が鮮明によみがえった。
情緒不安定だと言われても、返す言葉がない。



もう何年前だったか―――…チャレンジなんてかわいらしい名前のクソ訓練が、
今よりもまだ少し、賑わいを見せていた頃。
一度に訓練を開始できる限界12人の中に、その女はいた。

『ごめんね、実をいうと私、そんなに戦闘は得意じゃないのよ』

訓練開始早々に、その女はそう言って申し訳なさそうに頭を下げた。
じゃぁここへ何しに来やがったのかと、心底呆れたのを覚えている。
興味本位、物見遊山。娯楽のつもりでここへ来たなら、見当違いもいいところだ。

『私、メディカル勤めなの。だから前線へ出ることは少なくて……。
 でもだからこそ、前線で戦う人達がどんな思いをしているのか、
 知っておくべきだって思ったんだ』

心底舐めた発言だと思ったが、メディックとして彼女も本気であるらしかった。
最初、メディック特有のスキルがすべて使えないことに戸惑いこそしていたものの…
気休めでも何でも、彼女の言動は、神経をすり減らす過酷な訓練の中で、
多分…誰もが皆、癒されていたに違いない。

『このエリア、毒かな…気休めかもしれないけど、これ』
『何だよ?』
『モノメイトをしみこませた布。口に当てて。少しは毒を吸わなくていいかもしれないでしょ?』
『お前、貴重な物資を!』
『そうね、でも性分なの。あきらめて』

あぁ、そうだ…思えば最初からそうなのか。
あの男は、彼女と言動がそっくりだ。



ファンジを抜けた先が再びの火山洞窟……
それもまた、最初と同じく毒霧の舞うエリアだったものだから、
古い記憶を思い出してしまった。

ポケットの中に無理やり突っ込んだ、もう渇いてしまっている布にそっと触れる。
これを突き出してきたのは、あのいけ好かない男だが、
そこに触れると少しだけ…かつての彼女に守られているような気になった。



『何でも言って! 可能な限り、みんなの傷を癒すから』
『寝ぼけてんのか? そんなもん無理だ』
『私、傲慢なのよ。勿論君の事も守ってあげる』



俺より弱いくせに、と笑った。
楽しかった。
彼女の声が、今も頭の中で響いている。
彼女がいてくれた、それが力になっていた。
だからその日の訓練は、自分でも驚くほど身体が動いて。

調子に、乗っていたんだと思う。

踏破も近い、森林地帯の最深部。
調子に乗った俺の油断が招いた悲劇。
ファング・バンシーの強烈な一撃をよけきれなくなった俺を庇って。
彼女はあっさり、俺の前で死んでしまった。

『君は……すぐ、調子に乗るから―――…』

最期まで、穏やかで、やさしい声。
状況をまるでわかっていない、バカな女だった。

『ねぇ暁……私ね、君の事……守ることができたかな?』


―――…苦い思い出だ。
そしてそれが、俺自身への楔にもなってしまっている。
何せ、俺が殺したも同然だ。
俺が調子に乗りさえしなければ、こんな事にはならなかったのだから。
だからあの日、あの瞬間から……俺はチャレンジをやめることが出来なくなった。

死に場所探しなんてガキみたいなかっこつけた理由じゃない。
単純に時間が止まってしまった。
俺の油断のせいで守られてしまった命の使い方に困っていたとも言う。
あるいはもっとガキみたいに……チャレンジを繰り返していれば、
いつかあの日をやり直せると思っていたのか。

「その線の方が有り得るか……」

自嘲する。
本当にガキか、俺は。
恩に着せるつもりは毛頭ないが、他人を守ってやるなんて柄でもないくせに、
思えば使えないあの男の事は、何度も守ってやっていた。

「一番最初の森林エリアからだぞ、もっと力つけてから来いよ」

小さくつぶやく。
ああ、でもそんな使えない男の癖に、俺が一番嫌なタイミングで前に出てきやがった。
あれは本当に笑えない、最高のショー。
本気でぶっ殺してやろうかと思った。

仮想でも、あの日をもう一度やり直せるのだとしたら……
今度こそ俺が全部守ってやらないといけないのに。


もう二度と、俺の前には立たせない。


訓練も終盤に差し掛かり、毒霧の舞う火山洞窟の主は、おそらくヴォモスブロドシスとかいう
トカゲよりクソめんどくさい鳥に変わっていることだろう。
討伐は―――…無理だな。

それどころかあのクソ間抜け、ここに辿り着いた時には尻尾の一振りで伸びそうだ。
あの馬鹿がこのエリアを抜けるまで、注意の一つも引いてやるかと銃を確認する。

ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!

耳障りな咆哮。
中央に現れた巨大な鳥に嫌気がさす。

「―――…るっせぇな、せめて人の言葉でしゃべりやがれ!」

何度も見てきた、この鳥の弱点らしい頭部の角へ一撃。
次いで足元へ、けん制の一撃。
この程度の簡単な煽りで怒りを買って、何度も通ったこのエリアの端へ誘導する。
中央で踊ってやってもよかったが、遅れてきた馬鹿が巻き込まれるのは目に見えていた。


「……暁…?」


ようやく遅れてやってきた間抜けが、驚いたように目を見開く。

「よぉ、遅かったなクソ間抜け。さっさと進みな。ダンス教室も疲れるんだよ」
「―――…この、馬鹿野郎」

俺の言葉で、コウはすぐさま足を早める。
小さく吐き捨てられたその声は、怖いくらい鮮明に、俺の耳に届いていた。
スポンサーサイト



コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カテゴリ
過去のお勧め記事
プロフィール


名前 :コウ
人種 :ヒューマン/男性
メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
チーム8:Re:Monster(コモン)

ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

+・+・+・+・+・+・+・+・+・


『PSO2サポーターズリンク』登録中!


[c]SEGA

いつも投票ありがとうございます!
よかったら1日1回投票よろしくね!

カレンダー
10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
リンクについて
当ブログはリンクフリーです。
事前事後の報告は不要です。

相互リンク希望の方は
お気軽にコメントにてご連絡ください。

タイトル⇒ 初心者あんしん!PSO2
URL ⇒ http://kourk.blog.fc2.com/
管理者 ⇒ コウ

※ バナーは持ち帰りでお願いします


リンク
検索フォーム
最新コメント
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
QRコード
QR
アクセスカウンター

現在の閲覧:

2016/09/19設置。
今更感ある…。