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03:紫煙の並走

自己満足のチャレ小説の続きです。
物語は時間が空きすぎると忘れてしまうので、できるだけ完結まで定期的に
書いて出したいな~と思っているのですが……もうすぐ仕事が忙しくなりそうで、
一抹の不安を抱えています。

そんなに長編にするつもりはないんですが、元は1話読みきりのつもりだったのに
長くなってしまったものでこの先どうなることやら…。

今回はM2踏破まで。
わかる人はなんとなく察して楽しんでもらえたら嬉しいです。


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その傷跡に芽吹く花
03:紫煙の並走



むわっと全身を包み込む暑さに、ほんの一瞬だけ意識が遠のく。
ロック・ベアを倒した後に開かれた通路を通ると、心地のいいナベリウスの森林エリアから一転。
惑星アムドゥスキアの火山エリアに繋がっていた。
ここへきて、ようやく「やはりこの世界は仮想現実なのだ」という実感がわく。
本来ならば、全く別の惑星が通路一つで繋がる事など有り得ない。

「これだけの熱気を感じるのに、この世界は仮想なのか」
「現実と変わらない体験が出来る仮想ってのは、果たして『仮想』と言えるのかね」

先ほど俺を庇って負った傷が相当痛むのだろう。
暁は顔をしかめて、一番痛みが酷いらしい左腕を抑えた。

「怪我…大丈夫か?」
「お前のせいで大惨事だが、まぁ今回はこれで手を打とう」

そう言って暁は強引に俺のツールバッグからモノメイトを抜き取ると、
まるで酒でも煽るかのように、それを一気に飲み干した。

「ヴァーチャルリアリティってのもこんな時だけは悪くは無い。
 本来あの怪我じゃ、痛みで当分は動けなかったろうからな」

急速に痛みが引いたのか、暁の声に覇気が戻る。

「まぁお前がいなきゃ、あんな大怪我負う事もなかったんだが」
「……悪かった。本当に」

演技でもなんでもなく、気分が沈む。
彼の言い方にトゲがあるのは否めないが、それを否定できない失態を犯したのは自分だ。

「安心しな、お前の失態は一生ネタにしてやるよ」

全く安心できない。
それなりに申し訳ないと思っていたのだが、この男は性格に難がありすぎる。
やはり嫌な奴だなと再確認したところで、無理やり気持ちを切り替えた。

「…チャレンジは制限時間以内に最深部へたどり着ければ踏破した事になると記憶しているが、
 その認識は正しいのか?」
「間違っちゃいない。まぁ単純に走りぬけりゃいいだけなら苦労は無いが」

先ほどのロック・ベアしかり。
基本的に最深部へ続く進行ルートは、難題を解決しなければ先へ進めない仕掛けになっているのだろう。
しかし意外な事に、この火山エリアは特別危険を感じなかった。

地面から吹き上げる蒸気が気温を上げ、全身が重く、
体力の落ちた今の状態でサウナ状態のこの場所に長時間とどまるのはどうかと思うが……
先ほどのエリアに比べると、フィールドもさほど広いようには感じない。
何より、多少の距離はあるものの、直線距離で真っ直ぐ先に、次のエリアへ繋がるゴールが見えていた。

「…………」

「チャレンジ」は階層が進むにつれ、その踏破難易度も上がるという。
ロック・ベアとの戦闘訓練より楽なものが、後から出てくるはずは無い。
得体の知れない不気味さに思わず顔をしかめた。
瞬間、妙な眩暈を感じて、一瞬上体がぐらりと揺れる。

先ほどの森林エリアでは、急速に身体が重くなり、得意のテクニックも封じられた。
まさかここへきて、さらに何かしらのハンデを背負う事になるのだろうか?
身体の重さだけでも十分キツイのに、この眩暈では思考も定まらない。

しっかりしろ!

内心自分を奮い立たせるように気を引き締める。
だが、それをあざ笑うかのように湧き上がったのは、強烈な吐き気だった。

「ぅぐっ……!」

身体の内から危険信号が競り上がる。
いくらなんでも、この先ずっと課せられるハンデというには無茶があるだろう。
呼吸が上手くできなくなって、生理的な涙で視界がゆがんだ。
そこでようやくハッとする。
この症状は、強烈な中毒症状とよく似ていた。

あふれ出る涙を拭い、ゆっくりと呼吸を整える。
もう一度あたりを見渡せば、地面から吹き出る蒸気の白煙にまぎれ、
薄っすらと紫煙が漂っている。

「このエリア…有毒ガスでも噴出してるのか」
「ほぅ…流石に支援を勤めるだけの事はある。
 お前の事だ、ゲロって地面と抱擁しても気付くまいと思っていたが…見直したな」

手で口を塞ぎ、必死に吐き気をこらえる。
今は暁の嫌味に反論する体力すら惜しい。

「さて、この毒は命を奪うようなもんじゃないが、俺は毒のサウナに長居するほど奇特じゃない。
 お前がその手の人間で、よほどこの場を離れたくないって言うなら止めないが―――」

真っ直ぐ、暁の指が次のエリアに繋がるゴールを指し示した。

「そうじゃないなら、何があっても振り向かず、このまま真っ直ぐゴールを目指せ。
 視認できる距離だ。お前がさっきみたいに、どんくさいヘマしなきゃ、走るくらいわけないだろ?」
「引っかかる言い方をするな、君は」
「反論できるか? お前のせいで貴重な物資を一つ潰した」
「そうじゃない」

今更暁の罵倒が引っかかるなど、追求しても意味など無いだろう。
それを言い出せば出会いがしらからそうなのだから、
この毒霧サウナで改めて時間を割くほど重要な事でもなんでもない。

「『何があっても』というのはどういう意味だ」

それは言い換えれば、『何かが起こる』という事だ。
時間経過とともに体調はどんどん悪化する。
この上、まだ何かあるというなら、聞き出しておくべきだろう。
心の準備くらいはしておきたい。
しかしそんな俺の問いに、暁は心底めんどくさそうに息を吐いた。

「お前、質問すれば何でも答えが返ってくると思ってるのか」
「は…?」
「俺は毒サウナに長居する気はないと言ったな、つまり無知なお前に説明してやる時間も惜しい。
 お前は言われたとおり、ただ黙って突っ走ってりゃいいんだよ。
 俺をお前の被虐趣味に巻き込むな」

キッパリと拒絶し、言い切られる。
並べ立てられた厳しい言葉に、改めてこの男に自分は信用されていないのだと痛感した。

しかし、それを嘆く時間は惜しい。
一瞬眉を寄せるにとどめ、俺はツールバッグからモノメイトを一つ取り出すと、
ハンカチを二つに裂いて、双方に含ませた。

「…君に口を割らせる術は無いようだから、これ以上この場で言及はしない」
「お前、貴重な物資を!」

すぐさま飛んできた非難を無視して、片方を暁の前に差し出すと、その眉間にシワがよる。

「毒が何かわからない以上気休めだが、口に当てておけ」

視認できる距離とはいえ、ゴールまで体調を崩した身体を引きずり、走らなければならない。
息が上がれば、その分吸い込む毒も増えるだろう。
湿らせた布にどれほど毒を取り除くフィルターの役割を期待できるかは怪しいが…
少しでもマシになれば、それに越した事はない。

「人の話を聞いてなかったのか? この毒は死ぬようなものじゃない。勝手な判断で物資を無駄にするな!」
「君が大切だからだろう!」
「…は?!」

自分で気付いていないのだろうか。
全身を蝕む毒のせいで、暁の顔色もよくはない。

「時間が惜しいなら受け取れ」

突き出すハンカチを前に、暁は奥歯をギリリとかみ締め、ほんの数秒迷ったような素振りを見せたが、
やがて本当に時間が惜しいと思ったのだろう。
無言でハンカチをひったくるように受け取ると、心底腹立たしそうに呟いた。


「お前のそういうところが心底嫌いだ」


その声を合図にして、同時に地面を蹴る。
身体の重さに加え、周囲の熱気と毒によるだるさ。
…ある程度覚悟してはいたが、予想以上にこたえる。

森林エリアでは息を切らせこそれ、維持できていたはずのスピードは半分以下に落ち、
目の前に見えているはずのゴールがひたすら遠い。
毒対策にと口元に当てている湿った布は、酸素を吸い込む量すらも制限してしまう。
これではまるで、高地訓練だ。

…まぁ、毒がまわり、判断能力が落ちるよりはマシか。
一度森林エリアで盛大に状況判断を見誤った手前、同じ事を繰り返す馬鹿にはなりたくない。


並走する暁の足音を聞きながら、しばらく無言で走り続ける。
息の質が徐々にかわり、ゼェゼェと限界を訴え始めた頃。
ようやくゴールまで後150メートル程という地点に到達して、一瞬だけ気が抜けそうになった。
この毒霧以外、特にこれといって異常は無い。
だが、先ほどの暁の言葉から察するに、このエリアで「何か」が起こるのは明白だ。
緩みかけた気を、もう一度引き締める。

森林エリアと、この火山エリアをつなぐ通路前をロック・ベアが塞いでいたように、
何かが起こるとしたら、次のエリアへ入るこのタイミング。
上がる息に集中力の低下を感じながら、それでも可能な限り周囲を警戒すると、
それに気付いたのか、暁が横槍を入れた。

「いいか…さっきも言ったが、お前の仕事は何も考えずにゴールへ突っ込む事だ」

余計な詮索をするなという意味か。
周囲を警戒する精神力すら体力に回し、ただひたすらゴールを目指せと。
…滑稽だ。

たしかにこの訓練において、彼は熟練の戦士であろうし、自分は何も知らない雛も同然。
だが、それでも…少しくらいは苦難を共にする仲間意識を持ってくれてもいいようなものなのだが。

…期待するだけ無駄か。
そもそも彼は、最初から俺とこの訓練を受けることには乗り気でなかった。
俺が死ねば寝覚めが悪いという、ただそれだけの理由で行動を共にしているのだから、
彼にとってみれば大事なのは『見知った誰かの生死』であって、『俺個人』ではない。

全く……寂しい同行者だなと内心ため息をついたその瞬間。
強烈な地鳴りと共に、地面が大きく揺れた。
―――やはり、何かが起こった。

揺れる大地に足を取られてしまわないよう、しっかりと一歩を踏みしめる。
瞬間、真後ろに地鳴りの主が現れた。

惑星アムドゥスキアの火山エリアに生息する巨大竜の上位種族―――…バーン・ドラールと呼ばれる原生生物。
…なるほど、出口を塞ぐのは、仮想現実に映されたエリアに関係する生物という事か。
ロック・ベアに比べれば、はるかに討伐難易度のあがる敵。
今度は同じミスを繰り返すまいと、テクニックを安全に決められる位置まで、たっぷりと間合いを取る。
そうして竜の弱点を狙うべく視線をあげて……地鳴りの主と目が合った。


「――――――」


言葉を失う。
目線一つで叩き込まれた強烈な恐怖。
それは一瞬にして、自分が蹂躙される側の立場だと自覚させられた。
炎を形成すべく集まりかけたフォトンが霧散する


―――…この生物には勝てない。


ゴールは近く、その距離僅か100メートルほど。
竜によってふさがれたわけでもなく、それこそ暁の言葉どおり、
何も考えずに走り抜けてしまえる距離。

頭ではそう理解しているのに、交わした視線に縫い付けられ、
強烈な恐怖で足がすくむ。



「何やってる、走れッ!!!」



瞬間、暁の強烈な一声が、呪いの様な恐怖を破って、縫い付けられた足を開放した。
慌てて一歩踏み出すと、つい今しがた自分がいたその場所を、強烈なブレスが通り抜ける。
その奥にある大きな岩が、ドロリと水のように解けて消えた。

冗談じゃない。
あんな攻撃、一撃でも喰らえば即死だ。

バーン・ドラールのような巨大竜は、確かにアークスの調査においても
凶暴な原生生物という区分にはなっている。
しかし、その討伐や牽制は、後方支援を担当する自分にも回ってくる程度のものだったはず。
かの生物は尻尾と頭の角が急所であるらしく、その知識さえあれば難なく勝てるはずの相手だ。
だというのに、ロック・ベアとは比較にならないプレッシャーを前にして、言葉が出ない。

足が再び恐怖で地面に縫い付けられる。
喉の奥がカラカラと乾いた。

「チッ…」

側で聞こえた舌打ちは、暁のものだろうか。
もはや正常な判断もできなくなりつつある俺の横で、
どこから取り出したのだろう…彼の銃が竜の頭をとらえる。

ギヤアアアアアアア!!!

瞬間、耳を劈くような竜の悲鳴。
暁の放った銃弾は、寸分の狂いもなくバーン・ドラールの瞳を貫いていた。

「…この緊張感はたまらないな」

しかし、それだけでは倒れない。
むしろ暁の攻撃が、竜の逆鱗に触れたのだろう。
威圧感は一層増し、強烈な敵意が一身に暁へと向けられる。

「暁ッ!!!」

もはや聞きなれた彼の皮肉も、その表情を見れば虚勢なのだとすぐにわかった。
何より、ロック・ベアの時に口にした「討伐訓練」という言葉を、彼はこの場で口にしていない。
やはり、倒せるような相手ではないのだろう。


「もう一度言うぞ、役立たず。 走れッ!!!」


注意をひきつけるべく、出口とは反対の方向へ走り出す暁に、もう言葉は返せない。
俺は今度こそ震える足を殴り倒して、出口へ続く道を駆け抜けた。
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名前 :コウ
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メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
チーム8:Re:Monster(コモン)

ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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