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01:エゴイスト

特別暇になったわけでもなんでもないんですが、気分転換に小説を書きたいな~と思いまして。
チャレを舞台に、のんびり書きたいと思います。

設定とか大体公式にも無いオリジナル要素混ぜてますので、
問題ない方のみ閲覧をお願いいたします。

チャレンジクエストが舞台ですが、会話など完全にフィクションですので、
そのつもりで楽しんでいただけますと幸いです。

…二次創作は細かい世界観を説明しなくていいのが楽だね!


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その傷跡に芽吹く花
01:エゴイスト



それは世界の最深部を見てみたいという好奇心だったのか、あるいは単純に、
そこへ到達したというステータスが欲しかっただけなのか…今となってはわからない。
ひょんなことから友人に手渡された紙切れを眺めながら、オラクルの最下層にある
チャレンジブロックへ足を踏み入れたのは、かれこれ1時間前の話だ。


―――ヴァーチャルリアリティにおける、世界の再現。
そんなものを生み出す事に成功したとアークスの上層部が発表したのは、一体いつ頃の話だったろう。

その技術を利用して産まれたという、高難易度の訓練システム、通称「チャレンジ」。
リアルな情景は精神に多大な影響を与え、実際に命の危険さえ伴うという、考えうる限り究極の訓練システム。
「チャレンジ」などとかわいらしい言葉で飾ってはいるが、正真正銘、頭のイかれたプログラムだ。

発表当初、腕試しに挑んだ精鋭は沢山居たそうだが、訓練だと舐めてかかり、死人が続出。
それが切欠ですっかり下火になった「チャレンジ」は、今となっては知る者すら減り、
当時プログラムを実施していたここ「チャレンジブロック」も、ほとんど人の寄り付かない、薄暗い不気味なエリアになっていた。
電光掲示板に記される、古い宣伝……無駄に明るいチャレンジ推進広告が、一層雰囲気を引き立てる。


「…居心地が悪いな」

大きくため息をついた後、吸い込んだ空気はどんよりと重い。
直接戦闘を嫌い、他人を癒す技術ばかりを習得してきた自分にとっては、なんとも縁遠い空間だった。

それでも足を止め、知る人も少なくなったこの危険な訓練を受けようと決意したのは、
自分の力の無さを痛感していたからかだろう。
激化する敵対勢力との戦いで、周囲の傷が深くなってゆく事に、自分の治癒能力だけでは
カバーしきれない現実と直面して焦りが募っていたのもある。

自分とて、決して戦闘能力が無いわけではないのだが、どうしても他人を守る事に特化した戦い方は、
他者を傷つける事には向いておらず、足止め程度の外傷を敵に負わせる事さえ難しかった。
そのせいで、最前線からはずされたのは随分昔の話だ。

正直なところ、今まではその事に不満もなく、特に気にした事もなかった。
アークスという組織に身を置く手前、今更戦いが怖いなどという事は全くないが、
向き不向きの話をするならば、自分は全くの不向きだろう。
当然の結果だ。

それに前線に立つだけが組織のあり方ではない。
後方支援とて立派な役目であり、そして自分にはそちらの方が向いている。
ただそれだけの話だった。
最前線で戦っていた友人を失いかけるまでは。


自分にとってなんて事のないその日、古い友人が痛々しく大きな傷跡を残して会いにきた。
しばらく前線から離れるという友人は、「へまをした」とただ笑うだけだったが、
武勇の知れた彼が前線をはずされるなど前代未聞。
……それほどの傷を負ったという事に他ならない。
あと1分治療が遅ければ、命は無かったかもしれないと聞かされたときは、全身に寒気が走ったくらいだ。

それほどまでに激化する最前線の戦い。
その場にいられなかった自分。
胸が締め付けられた。

もしも自分が彼の側にいたのなら、今頃彼にこんな痛々しい傷跡など残してはいなかっただろう。
たちどころに治し、痣の一つも許さなかったに違いない。
それだけの腕があると自負していたし、それこそがアークスとして認められた自分の力だ。
けれど、その力では前線に立てない。
ジレンマだ。

次も同じように友人が助かるとは限らないというのに…死の淵から救う力が自分にはあるというのに…
その力を行使する権限が…前線へ出る資格がない。
心の底から悔しかった。

そんな時に思い出したのが、チャレンジプログラムの存在だった。

このふざけた名称を掲げる訓練システムは、実質高難易度の命を懸けたイかれた訓練。
もし、その訓練を受けて最深部まで踏破できたならどうだろう…。
そのステータスがあれば、おそらくは前線へ志願する事も可能になるのではないだろうか?
あまたの精鋭が挑み、敗れたシステムだ。
異動を志願する実績としては十分であるに違いない。

自分のあずかり知らないところで、知人を失いたくは無かった。

我ながらなんと傲慢な考えなのかと苦笑を一つこぼすと、思いの外響いた息遣いが反響する。
本当に静かだ。



「お前がコウか」



瞬間、真横から声が飛んで、思わず身体が跳ねる。
慌てて声の方へ視線を向ければ、薄暗いチャレンジブロックの中でも、さらに入り組み薄暗くなった一角。
気にしなければ気付かないような壁際に、男が一人立っていた。

「…えっと……貴方は?」

…いつからそこに居たのだろう?
全く意識に入らなかったとはいえ、いくらなんでも気配くらいは感じてもいいはずなのだが…。
男はまるで薄暗い闇から今しがた出てきたばかりのように、声を上げた瞬間から色濃い気配を漂わせる。
今までの空気が嘘のようだ。
驚いて目を見開くと、そんなしぐさが予想通りだったのか……男はため息をついて、あからさまに肩をすくめた。

「その紙切れに書いてあるだろ、暁様だよ。お前の愉快なお友達が紹介したな」

歳はいくつか下だろう。
纏うオーラは一瞬で周囲を飲み込むほどの存在感を放つのに、声は意外と若い。

「貴方が…?」
「ああそうだ。ヘマして死にぞこなったお友達のお加減はどうだ?」
「…………」

随分と言葉選びに癖がある。
人が嫌がる言葉を意図的に選んで喋るような男に目を細めると、
暁と名乗った男は面白くなさそうに息を吐いた。

「ジョークだ、笑えよ」

本気であったなら問題外だが、ジョークであっても笑えない。
だが、彼が紙切れに書かれた男であることに間違いはないようだった。


友人に、「チャレンジ」へ挑むという話をしたのはつい先日。
意志の固さを知っているのか、友人は俺がこのプログラムを受ける事に一切反対はしなかった。
変わりに渡されたのが、今手にしている紙切れ。

そこに記された内容は、『暁という男に助力を請え』というものと、その人物にコンタクトをとれる場所の指定だったのだが……
記された『暁』が本当にこの男で間違いないというなら、とんだ仕打ちだろう。
人の神経を逆撫でるような物言いをする相手に命を預けるなど、論外だ。

「で、一応訊くが…お前一体何しにきた」
「随分な物言いだな、俺の方が年上だと思うんだけど」
「歳なんか関係あるかよ。ここで物を言うのは経験だ。それとも敬称でもつけて欲しいか、コウちゃん」
「……コウでいい」

『ちゃん』は敬称ではないだろう。
この程度の馬鹿にした物言いを今更追求するのも億劫で、そのまま言葉を聞き流す。

「もう一度訊くぞ、何しにきた」
「この紙切れを知っているなら、わかっているんだろう? 助力を請いにきたつもりだった」
「だった…?」
「随分と嫌われているなと思って」

実際のところ、出会った直後で好きも嫌いもないだろう。
おそらくは、嫌われているから攻撃的な言葉が返ってくるわけではなく、これが彼の地だという認識で間違いは無い。
……誰にでもこうなのかと思うと、頭痛がする。

「助力を請うのは難しそうだ」
「案外頭は悪くないな。お前は自分が不合格だってちゃんとわかってる。感心感心。
 それがわかったなら、帰ってヘマしたお友達の看病でも続けてな」
「……君は少し、言葉を選んだ方がいいだろうな」

「貴方」から「君」へ呼称を改めたのは、もしかしたら小さな抵抗だったのかもしれない。
これ以上の問答は無用だと、彼の側を通り過ぎようとしたところで、腕をぎゅっと掴まれる。
ただ掴まれただけだというのに、予想以上の力が込められており、困惑した。

「お帰りはそっちじゃないだろ、プリンセス」
「…その言い方は馬鹿にしているのか?」
「愚問だな。こんな真横にいて気配の一つも感じられない奴がチャレンジプログラム?
 …まさか今時、『チャレンジ』なんて幸せネームのせいでご機嫌な訓練だと勘違いした馬鹿野郎に
 出会えるとは思いもしなかったよ。
 そんな勘違いができるんだ、世間知らずのプリンセスじゃなきゃ、何なんだ?」

本当の姫が聞いたら怒りそうな話だが、彼の言う「姫」は、すなわち、
「蝶よ花よと育てられた世間知らず」と言いたいらしい。

「俺はお前の白馬の王子様じゃない。お守りはごめんだ」
「…………」

いい加減頭にきて言葉の一つも返そうと睨みつけると、視線があう。
握られた腕に、ぎゅっと力が込められた。

毒気が抜かれる。
瞳に映る色は、言葉からは感じられないほど真剣で、思わず声を失った。
あれだけ人をコケにするような言葉を選んでおきながら、表情にはそれが全くない。
その不思議な言動に、出かかった言葉が霧散する。

「……別に俺はチャレンジを舐めているわけじゃない」

やっと出た言葉に、暁の目が細まった。

「お前がチャレンジに挑む事になった経緯は聞いてる。自分の知らないところで大切な人を失いたくない、だったか?
 バカも休み休み言ってくれ。そんなエゴ丸出しの偽善野郎なら、さぞかし腕が立つんだろうと思ったわけだが、
 現実はコレだ。自分自身を守れない奴が、どうやって他人を守るんだよ」
「そうなるためにこの訓練を受けるんじゃないか」
「自分の力量がわかってないにも程がある。死人が出てる訓練だぞ。自分だけは例外だとでも思ってたのか?」
「それは……」

ドキリとした。
このイかれた訓練がまともでないことはわかっていたし、死人が大量に出ていることも知っている。
それでもこの訓練を受けようと思ったのは…彼の言うとおり、『自分だけは例外だ』と、
心のどこかで思っていたからなのだろう。
核心を突かれ、視線が泳ぐ。
その変化を、暁は見逃さなかった。

「わかったなら帰りな。俺は王子様でもなけりゃ、葬儀屋でもないんでね」
「…………」

彼の言う事はもっともだと思いながら、しかし足は地面に縫い付けられたように動かない。
力も伴わないくせに抱いてしまう、『誰かを守りたい』というエゴ。
それがいかに傲慢であるのかわかっていても、今更変えられないのが性分だった。

「…お前、めんどくさい奴だな」
「何も言っていないんだが」
「ここまで言っても帰る気が無いって顔に書いてんだよ」
「このまま一人でも挑むという事も?」
「バッチリと」

疲れきった表情で答える暁が、少しだけおかしかった。
これだけ邪険にしておきながら、意外にも俺の事を心配しているらしい。
本当にめんどくさいと思うなら、このまま放置しておけばいいだけなのだが、
そこまで冷酷にもなりきれないのだろう。
暁は表情をゆがめて、小さく頭をかいた。

「一度でも接点を持ったお前がこのまま死ねば、寝覚めが悪くてかなわない」
「…………」

その言葉は多分、俺に向けられたものではないのだろう。
どこか遠くを見るように吐き出された言葉は、俺の中に別の誰かを見ているようだった。

「…君も十分エゴイストだ」
「は…?」
「自分のあずかり知らないところで、知ってる誰かが死ぬのは辛い。同じだろう?」
「…………」

図星だったのか、暁は面白くなさそうに視線を逸らす。
自分が側にいれば助けられるだなんて保障も何もありはしないのに、見捨てる事ができない。
他人の力を信じていないわけではないのに、自分の手から離れていくのが恐ろしい。
その感覚を持っている俺が言うのだから、間違いは無いだろう。


「…厄介な奴を紹介されたもんだ」


掴まれた腕から力が抜けるのを感じ取り、俺は小さく笑みを返した。
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名前 :コウ
人種 :ヒューマン/男性
メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
チーム8:Re:Monster(コモン)

ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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