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小説:エピローグ「動き出した時間」

チャレンジクエストを題材にした二次創作小説第二弾も、これで完結です。

文章量150KB以上…四捨五入で160KB。
前回より短く終わると言っておいて、前回より増えてる…。
やはりラノベ1冊分くらいの量に、長らくお付き合い有難うございました。

1月以内に書き上げたぜ…!
この小説に関して、ちょっと言い訳とかしたいこともあるのですが、
(公開するからには堂々としろというのはごもっともなんですけどね!)
あまりに眠たいので…それはまた、明日にでも。

とりあえず、最終話です。


↓↓ 折り畳み記事で小説本編へ


その約束が繋ぐ先
エピローグ:動き出した時間


アドルフが暴いて見せたチャレンジ訓練の本質は、それを持ち帰ったコウの手によって白日の下にさらされた。
それが切っ掛けとなり、上層エリアは一時騒然となったらしい。
勿論、しばらくの間訓練は閉鎖され、上層エリアでは大掛かりな追悼式もあったという。
興味のない話だったものだから、詳しい事は知らないが。


……あの悪夢のような訓練から、ひと月。
落ち着きを取り戻し始めた下層エリアで、俺は大きく息を吐いた。


俺の右腕は、まだ全快とは言わないものの、明確な治療法が確立し、
少しずつだが感覚を取り戻しつつもある。
いつか、義手から解放される日もくるだろう。


あの訓練の全貌を知って、一瞬脳裏をよぎったのは、かつてチャレンジで失った
俺が唯一惚れた女の事だった。
もしもステーキとして出荷されていなかったなら、まだ救える見込みはあるのではないか?
そんな、どこかの誰かみたいな希望を一瞬抱く。


……一体何年前の話だと思っている。


無理に決まっていると切り捨てて、苦笑が漏れた。
…そんな馬鹿みたいな妄想が脳裏をよぎるくらいには、平和ボケしているらしい。



目の前で眠る男に視線を落とす。

コウが俺のために切り捨て、かつて架空の世界で共に戦った男。
…前線に立つ彼を、黒幕が切り捨てるはずはないと思っていたが、
想定外の強烈な負傷に、どうする事もできなくなってしまったのだろう。

そりゃそうだ、至近距離でガンスラッシュを暴発させるなんて真似、
常に安全圏にいる奴らに考えつこうはずもない。

コウが告発する前に、ステーキとして出荷されなかった事だけは予想通りとは言えるものの、
あれからひと月経った今も、彼の意識は戻らなかった。


下層エリアには似つかわしくない、白く清潔で……けれど狭い部屋。
棺を連想させるこの病室に、コウはあまり近づきたがらなかったが、
変わりに俺が、日に何度も足を運んでいた。

もしかしたら、懺悔のつもりだったのかもしれない。

脳死というよりは、植物状態という感じらしい彼は、まだ蘇生の可能性が残っているようではあったが、
コウが近寄りたがらないあたり、もしかしたら未来は絶望的なのだろうか。
そういえば、植物状態の患者は、やがて緩やかに脳の他の機能が停止して死んでいくのだと
昔どこかで聞いたような気もする。


「それでも様子を見に来る当たり、俺は期待してるのか…?
 どっかの間抜けに影響されたか……随分腑抜けたもんだ」


今この時を生きる事に関して、この男に遠慮してやるつもりもなければ、
生きてしまってすまないと思うわけでもないが―――…
コウに選ばせ、この男の目の前で命を切り捨てさせた事に関してだけは、少しだけ罪悪感が残っていた。


「暁…また来てたのか」

俺が退室しようと踵を返したところで、今見舞いに来たらしいコウとばったり出くわした。
既に周知の事とはいえ、頻繁に見舞いに訪れるあまり自分らしくない姿を見られてしまい、
少しばかり居心地が悪い。
…これではまるで、俺がひどくアドルフを気にかけているようだ。

実際そうなのだから仕方のない話ではあるが、
それでもその姿はあまりに自分らしくなく、俺自身が気持ち悪いと思っていたのだから、
居心地が悪くなるのも仕方ない。
しかしコウは、俺のそんな様子を特に気にした風ではなかった。

……もしかしたら、単に注意力散漫なのか。
白衣は小さく汚れ、その顔色は少し悪い。
相当疲れている事が一目見ただけでうかがえる。
それでも彼はそんな自分の事に一切構わず、持参したらしいタオルでアドルフの顔を優しく拭いた。

あれからひと月……それがコウの、今の日課らしい。

架空とはいえ、脳に強烈な影響を与えるあのバーチャル世界で、全身火傷を負ったせいだろう。
アドルフの肌は全身がひどくこわばっていた。

それを優しくほぐすように…。
寝たきりの彼の筋肉が固まらないように…。
コウは毎日、顔が終われば全身を。
清潔を保つ事とマッサージをかね、撫でるように拭いていた。

その表情は依然、冴えないまま…。
こうして意識を取り戻さないアドルフと直面し、硬くなった身体へ直に触れるたび、
あの日の出来事が昨日の事のように思い出されてしまうのだろう。
心に負ったその傷は、コウにとってまだ耐えがたい事らしかった。


「…おい金髪。てめぇいつまで面倒見させる気だ」


コウがアドルフの上着に手をかけ、上半身を拭き始めたところでそう吐き捨てた。
その若さで介護つきは笑えない。
あまりこの場に近寄りたがらないコウではあったが、それでも日に一回は
こうして介護に訪れている。
随分献身的な事だ。

一時は、彼が医者だからなのかとも思ったが……実際は違うだろう。
これは、コウなりの懺悔なのだと察した時、結局似た者同士かと苦笑が漏れた。



「一生面倒みてくれてもええんやで?」



―――…あ?
そこまで考えたところで、急に言葉が返された。
返ってくるはずのない言葉に、返事が返される。

久しく聞いていなかった、不愉快な言葉選びに、俺は一瞬眉を吊り上げた。
ひと月言葉を口にしていなかったせいだろう……ひどく掠れたその声は、
それでも確かに俺の神経を逆撫でるような言葉を選んでいる。

……思わず、声を上げた人物を見た。


「暁、式はいつがええ?」


いつかのように。

この一か月が嘘のように。

何も変わらず、馬鹿な言葉をかけられる。



「―――…てめぇはコウ一筋になったんじゃなかったのか」

思わずそう、問い返した。
これはいつかのやり直しか?
かつて架空の世界で返したはずの言葉を、もう一度口にする。


「せやな、コウくんは俺の服まで脱がして…めっちゃやらしいで。
 そんなに俺の事待ちきれんかった? ちゃんと可愛がったるからな!」


身体を拭く手を止めて、コウが固まる。
上体を起こし、そんな彼を抱き寄せて、どこぞの国の王にでもなったかのように、
目の前の男は俺も傍に来るよう、偉そうに手招きをして見せた。


「さて暁、俺寝てる間に重大な決意をしたんや」
「…どうせろくな事じゃねぇだろ」
「いや、重大な事や。俺、大奥作るわ。これで暁とも結婚できるで!」


ヤッパリろくな事ではなかった。
人が心配している間に、そんな事を考えていたのかと思うと、心底苛立ちが巻き起こる。


「てめぇは一生眠ってろ!!!」


湧き上がる怒りが、あまりに以前と同じ感覚だから、どうしようもなく泣けてきた。
叫んだ声は、震えてなどいなかったろうか…?
いつも通り、なんら変わらない時間が動き出したこの瞬間、
泣きそうになってしまった心を必死になって落ち着ける。

「俺が寝たきりになったら、コウくんが俺の下の世話まで全部してくれるし…ありやな」
「えっ?!」
「だって、戻ったら結婚するって約束したもんな!」
「い、いや、そんな事は約束してな……」
「俺の事、大好きやねんもんな!」

困ったような声をあげ、それでも心底嬉しそうに笑うコウにつられて、
俺の涙腺も緩んでしまいそうになる。

「コウくん、ヤッパちゃんと笑うとかわええで?」

そう言いおいて、いつまでたっても彼の傍へ近寄らない俺にしびれを切らせたのか、
アドルフは身体をだるそうに起こして、俺の前に立った。

「暁も、泣くほど心配してくれてんな。俺の事大好きか! ありがとう!!!」


そう言って俺の帽子をとると、頭を優しく撫でられた。
その手を払い、俺は今度こそ気持ちを切り替える。



「ぶっ殺すぞ!!!」



これほど気持ちよく言葉が出たのは、本当に久しぶりだった。
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プロフィール


名前 :コウ
人種 :ヒューマン/男性
メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
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ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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