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小説:12「その人柄は全てを暴く」

チャレンジクエストを題材にした二次創作小説第二弾。

これが書きたくて序盤からずっと話を組み立ててきた!
…ということで、物語の佳境です。
前作と同じく、最終話まで連続で投稿するよ。

…どうでもいいですが、前回の話についての余談。
よほど腕に自信があるならともかく、M10の鳥の頭には、
チェインやらない方がいいんじゃないかな~と主は思うのでした。

物語の進行上、ああいう表記にしただけだよって話ですね!


↓↓ 折り畳み記事で小説本編へ


その約束が繋ぐ先
12:その人柄は全てを暴く


「生かしたい方、って……何を…」

喉の奥が急速に乾いてゆく。
なんて提案をしてくるんだ、暁は。
そんなもの、選べるはずがないだろう。

いつもの笑えない冗談だよな……?

そうではないとわかっていても、問わずにはいられなかった。
彼の真面目な声のトーンは、俺をからかっているだけなのだと思いたかった。

「…暁?」
「…………」

けれど、返事は返ってこない。

「おい、暁?! 聞こえてるんだろ?!」

ドクドクと心臓が鳴る。
彼の身体の下に広がる赤黒い血の池。
まさか……出血多量で意識を失った?!

……当たり前だ、すぐにレスタをかけなければ死んでしまうような怪我だったんだぞ!
むしろ今まで意識を保っていられた方が奇跡に等しい。
あまりにも彼が、普段のソレと変わらない話し方をするものだから、
心のどこかで余裕があるのだと錯覚していたのだろう。

馬鹿か俺は!
それはここがヴァーチャルであったから許されただけの話だろうに…!


とっさに目にしたカウントは、ヴァーチャルから現実への帰還まで、
残り180秒を示していた。

たった3分……それが待てない。


自分より随分と筋肉質の暁を、アドルフの傍へ……
双方にスターアトマイザーが届く距離まで運ぶのは、すぐに出来る事ではなさそうだったし、
逆に自分と似たような体格のアドルフを暁の傍へ運ぶのも、やはり骨が折れそうだった。

子供を抱いて場所を移動させるのとはわけが違う。

意識のない成人男性を運ぶとなれば、現実世界へ帰還する時間を待った方がまだ建設的。
…本当に、どちらかしか選べない。
どちらも選ばなければ、どちらも死んでしまう。


自分でも、顔面蒼白になっているのがわかった。


今日まで俺の我儘に何度も付き合い、命を懸けて守ってくれたのは暁だ。
だけど、今ここで、俺が呼吸をしていられるのは、傍で支えてくれたアドルフのおかげ。
…どちらも、俺にとって命の恩人。
大切な友人だ。

いや、もしそうでなかったとしても、ただの人間に過ぎない俺に、
他人の命の取捨選択など、荷が重すぎる。
だけど考えている時間は無い。
気が狂ってしまいそうだった。


「コウくん」


ショックに打ちひしがれる俺に、後ろから響く、アドルフの声。
既に意識を手放してしまった暁ほどではないにしろ、
彼もおそらく、3分持ちこたえるのは無理だろう。

自分でもわかるほど、交わした視線に絶望の色が映った。

「アドルフ…さん?」
「そんな顔しなや……」
「見えてるのか?」
「見えとるよ。いっそ俺も感覚全部消してくれればよかったのに。
 生憎五感は正常……感度抜群。全身最高に痛いで」
「アドルフさん、俺……」

どうしたらいい?
そんな馬鹿な質問をしようとしている自分に気が付いて言葉が途切れる。
そんなもの、彼にだって結論を出す事は出来ないだろう。

自分に向けられた究極の選択。
その責任から逃れたくて、弱さのまま、痛みをこらえる彼に頼ろうとしてしまった自分が
ひたすらに情けない。

だけど、どうしていいのかもわからなかった。


「気にせんでええよ」


俺が言葉を詰まらせたその瞬間、今まで聞いたどんな声より穏やかに。
アドルフはそう言って、もはや表情もよくわからなくなったただれた顔で、
笑顔を作ったような気がした。


「暁の事、助けたいんやろ?」


何を言い出すのかと思えば。
アドルフは、簡単に自分の命を諦めるような人ではないはずだ。
遠慮? それとも痛みの末に自虐的にでもなっているのか?

……そのどちらでもないと、心の隅で感じながら、俺はその結論を必死になって否定する。

「何を……俺はアドルフさんだって―――…」
「でもコウくんは、暁を選んだんや」

そんな俺の否定が言い終わらないうちに、アドルフはきっぱりと…優しい声で断言した。
その声は、俺にどんな逃避も許さない。

「…馬鹿を言うのはやめてくれ」

精いっぱい返した言葉は、降参の白旗にも似て。
俺はアドルフの言葉を前に、半歩後ずさった。

…今、彼の言葉を聞きたくない。

俺は暁とアドルフの命をはかりにかけて、どちらかなんて選べないし、選んでもいない。
今この状態で、それが決して褒められた事ではないとわかっていても、
俺には優劣をつける事など出来るわけがなかったし、したくもなかった。



「じゃぁ何でコウくんは俺を見る時、そんな絶望的な目をしてるんや?」



――――――……。

ぐさりと、心臓に杭が撃ち込まれたような衝撃が走る。
一瞬呼吸が止まり、声が出ない。
アドルフは、必死に逃げようとする俺を、逃がしてはくれなかった。



『―――…だがもし、コウの言いたいことが事実なら。それって、かなり怖い事だな』



自分ですら気づかないほど、心の奥底に隠していた本心を暴かれたような感覚。
いつか、暁が言っていた言葉が脳裏をよぎった。

アドルフの人間性は、隠されていた物事の本質を暴いてしまう。

最初、それは暁のような不器用な人間の本質を暴く、微笑ましいものだと思っていた。
けれど現実は、もっと単純に、わかりやすく残酷だ。
隠しておくことで保たれていた平和を、いとも簡単に壊してしまうソレ。
彼のその性質は、死にたくなるほど凶悪な……真実を突きつける鋭利な刃だ。


俺は二人が大切だと言いながら、その実、心の奥底で、優劣を決めてしまっていたのだろう。
……でなければ、説明がつかない。
暁を救うと決めなければ、アドルフに対して、絶望の視線など向けるはずがなかった。

綺麗ごとで言葉を飾り、本心を騙し、自覚すらしなかった醜い本質―――…
アドルフは今このタイミングで、決してその本質から逃げられないよう、俺の前に突き付ける。
自分自身のあまりの弱さと汚さに吐き気がした。


「勘違いせんといてや…俺はコウくんを責めたいわけやないねん。
 俺は暁の事も好きなんやで? だからコウくんが暁を選んでくれて、よかったと思っとる」


自己嫌悪で死にたくなった俺に、アドルフは言葉をつづけた。
何処までも優しい彼の声に、涙があふれる。

「こんな時に…、アドルフさんは―――…」

こんなに残酷な選択をしてしまったのに。
俺が気負わないでいいように。
俺に責任は無いのだと言うように。
優しい声で背中を押してくれている。

「約束したやろ? 俺に何かあっても見捨てる事」

それはインターバルで交わした、たわいのない約束だ。
俺を元気づけ、前に進むために交わしてくれた、アドルフの優しさ。
それが、今もまた―――…俺を前に進ませるために、彼の口から紡がれる。

「なぁコウくん…今度こそ俺に惚れたやろ? ここを出たら、結婚しよな」

最後はいつもの台詞。
おどけたように、果たせるはずのない約束を持ち出された。


俺が暁を選択したら、アドルフは二度と目覚める事はないというのに?


出かかった言葉を飲み込む。
俺の言葉は、彼がくれた優しさに水を差してしまうだけだろう。
かといって、今他に何を口にしても、声が震えて、まともな言葉にならない気がした。


「俺は…、そういうアドルフさんが大好きだ」

ようやく出た言葉は、答えになってはいなかった。


***


戻った視界へ、最初に映ったのは真っ黒な天井だ。
まるで下層エリアのようだとぼんやり思う。
部屋の一室としてみれば随分高いソレは、しかしここが天国だと思えば随分低い。

…おっと、天国ではなく地獄というオチだろうか。

黒い天井……そちらの方が幾分似合っているような気もする。
そもそも俺自身も、天国というよりは地獄行きという方がしっくりきた。
今更、天国へ行けるほど善行をつんできたと言うつもりもない。

「クソ…身体は随分だるいな」

死の感覚というのは当然初めて味わったものだが、こんなものなのだろうか。
ゆっくりと立ち上がると、全身が鉛のように重かった。



―――…生かしたい方を選んで蘇生しな



そう言ってコウを突き放したが、実際彼がどちらを選ぶのかなど、
考えるまでもなくわかり切った事だ。
コウが望む言葉をかけ、コウを気遣い続けたあの男を、彼が切り捨てられるはずがない。
インターバル中も常に傍に寄り添い、気に入っていたアドルフを、助けたいと願うだろう。

…別にその判断に対して、異論はない。


ステーキにされる事に関しては異議を唱えていきたいところではあるが、
俺は自分の生に関して、特に未練はなかった。

ならば「アドルフを救え」と言ってやった方がよかったのかもしれないが―――…
そこで「お前が決めろ」と言ってしまったのは、もしかしたらほんのわずかな
抵抗だったのかもしれない。
そこまで他人のために優しくしてやる気がなかったというのも、多少はあるが。


どうせアドルフを選ぶんだ、なら少しくらいはいいだろう。


俺を切り捨てるその意味を、あの平和ボケした頭に刻み込んでやりたかった。
それでほんの僅かでもあの男が傷ついてくれるなら……。
下層エリアに住み着き、他者に認識されていない俺にも、
生きた証が残せるような気がしていたのかもしれない。

そう考えて、未練だなと思った。
結局俺は何だかんだでコウの事を気に入っていて、そんな彼に選ばれない事が悔しかったのだろう。
実際はそんな単純な理屈。
それが気に食わなくて、ちょっとした意地悪をしてやったに過ぎない。

あの男なら、いつかその痛みとも向き合える。
そう思うから、言えた言葉だ。


…まぁそれも今更の話。
俺は起こしたばかりの重い身体を引きずるように、辺りを見回す。
壁は全体的に白く、ここは小さな部屋のようだった。
天井の黒さを気にしなければ、まるで病室のようだと思う。

部屋の隅にある扉に手をかけたところで、息をのんだ。


「…おいおい、地獄ってのは、下層エリアの事なのか?」


淀んだ空気、オレンジのネオン。
眼前一体、見慣れた景色が並んでいる。
そして頭をかいたところで……何かが急に、俺の身体へぶつかった。

ぶつかるまで気が付かないとは、随分と油断がすぎる。
そう思って俺は一瞬身体を固くするが……ぶつかった相手に気が付いて、すぐにその緊張を解いた。

「コウ……」

何でお前がここにいる?
次第に沸き起こる苛立ち。

まさかあの後、結局どちらも選べなかったなどと甘ったれた事を抜かすのではあるまいな?
そうして、自分の不甲斐なさに悲観してあの世へGo?

……ふざけるなよ。

お前と地獄までデートしてやる気は無いぞ。
そう口にしようとして……俺にぶつかった男が震えているのに気が付いた。
…寒いわけじゃないだろう。

やがて俺の背をかき抱いて、小さく告げる。


「―――…君が生きていてくれて、よかった」


震える声。
真正面から抱きしめられて、その表情はわからない。
…いや、多分、知らない方がいいのだろう。

「――――――…」

ここでようやく俺は、自分が認識違いをしていた事に気が付いた。
その事実が恐ろしくて、言葉が何も出てこない。


―――…お前、まさか俺を選んだのか?


耳元で聞こえる吐息が。

全身から伝わる熱が。

存在全てで伝えてくる震え。


泣いているのだろうとわかるのに、その現実を突きつけてやるのはあまりに酷な気がして、
俺は何も気が付かなかったフリを続ける。

コウはひたすら、俺の生を喜ぶだけで、他の言葉は口にしない。
彼にとって、身を割かれるほど苦しかったはずの決断も。
俺を選んでしまった事で、あいつを見捨てた事に対する懺悔さえも。
本当は吐露してしまいたくて仕方ないはずのその気持ちを押し殺し、
ただ、俺の生だけを喜んだ。

多分、ほんの僅かでもこの決断を悔いてしまえば、
『暁を選んだ事を後悔している』とでも俺が捉えかねないと考えているのだろう。
生真面目で、融通の利かない、不器用な男だ。

あんまり舐めるなよ。
今更、そんな小さな事で、俺が怒るはずもないだろうに。

面倒ごとはいつも俺を頼るくせして、こういう時には頼らない…
コウの不器用さが、ほんの少し、喉の奥に引っかかった。


「君はいつも、こんな痛みと戦っていたのか……暁は強いな」

初めて向けられる、同情を一切含まない、寂しい敬意。
一生理解されないだろうと思っていた俺の生い立ちを認める言葉。
…精神がざわつく程には、理解されたくて仕方なかったその気持ちを、
今彼に理解されてしまう事に、とてつもなく胸が痛んだ。


「暁、生きてくれて、ありがとう」



 (C)SEGA

コウの言葉に、俺は無言でその背を抱きしめ返す。
感覚を無くしたはずの右腕が、彼のぬくもりを僅かにとらえた。
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メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
チーム8:Re:Monster(コモン)

ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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『PSO2サポーターズリンク』登録中!


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