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小説:11「選べ、どちらを生かすのか」

チャレンジクエストを題材にした二次創作小説第二弾。

ようやく書きたかったところまでこぎつけた感じの終盤です。
チャレンジクエストを題材にした小説ですが、今回、クエスト内容自体は
割とおまけの構成なので、クエ自体にはあまり触れてきませんでした。
他の部分を描きたかったわけですが、本当にチャレである必要はなかったのでは…疑惑。

今度こそ、あと1~2話で終わる予定です。
前回より短編のはずが、前回より長くなってしまった…。


↓↓ 折り畳み記事で小説本編へ


その約束が繋ぐ先
11:選べ、どちらを生かすのか


映画やドラマ、フィクションの世界で、事件の最中、大切な人を失った人間が立ち止まる姿を見るたびに
考えていた事がある。

「前を見ろ、先へ進め」今そうやってショックに打ちひしがれる間にも、
危険はすぐ目の前まで迫ってきているのだから。
何をグズグズしているのかと、苛立ちすら感じる事は珍しくない。
これ以上事態を悪化させるような愚策をとる事に眩暈すら覚える。

ああ、でもそれはやはり、他人事だから抱けた感情だったのだろう。
実際経験してみると、本当に何も考えられなくなりそうだった。

大切な人の死を目前に、冷静でいられるはずがない。
目の前に迫りくる危険へ、すぐに意識を切り替えられるはずもない。

もうじき終わるであろう暁の命を前に、彼から飛ぶ叱責は耳にも残らなかった。
俺でさえそうなのだから、彼とより長い時間を共にしてきたコウにしてみれば
俺以上にショックだった事だろう。


何とかギリギリのところを踏みとどまり、怪鳥・ヴォモスブロドシスへと武器を向ける。
そんな俺の背を、コウが追ってこなかったとしても、それを責められるはずがない。


「ほんまに…何でこんな訓練受けてもーたんやろ」


もし俺が、あのデータベースへのアクセス方法を伝えなければ。
この訓練を受けなければ。
余計な事を考えなければ。
暁は今頃、この鳥を地面に這いつくばらせて得意の嫌味でも言っていたのだろうか。
自分のちょっとした正義感が招いた結末に、ひどく後悔する。

じわじわと蓄積される、怪鳥の攻撃が地味に痛んだ。


***


「これ、借りていくよ……君の武器を借りるのは二回目だな」

涙に震える声を必死に紡いで、金箔の僅かに禿げた双機銃を手に取り立ち上がる。
以前暁が俺に託したその武器は、彼にとっての切り札のようなものらしかった。
狙いさえ外さなければ、強力なダメージを叩き込める銃。

…それは普段、俺が最も苦手とする武器で、以前はチェインを見事に外し、
窮地に陥ったものでもある。

それ以降、ミスの反省から、多少の練習は重ねたものの、やはりまだ全くうまく扱えないそれは、
いわばお守りのようなものだった。

「必ず倒してくる。だから君は…絶対死ぬな」

この武器を使えば、暁が力を貸してくれるような気がしていたのかもしれない。
……自分で死ぬなと言っておいて笑える。
これではまるで死人扱いだ。
手にした双機銃は形見分けもいいところだろう。


…いや、どう取り繕っても、実際そうだ。
メディックの俺でなくても分かる。
今はまだ生きているというだけで、暁が死ぬのは時間の問題だった。
レスタでなければ蘇生できないレベルのソレは、このチャレンジにおいて絶望でしかない。

そんな彼の傍を離れてしまう事が悔やまれる。
最期の時を、たった一人にしてしまう事が悔やまれる。

そこまで考えて、俺は大きく息を吸い込んだ。


まだ、終わったわけではない。


暁が生きている間に怪鳥を倒しきり、この訓練を終了させる事が出来たなら、
暁を救い出す事だって出来るだろう。
この訓練の仕掛けはアドルフのおかげでほとんどわかっていた。
どんなに神経を殺されたって、生きてさえいてくれれば、必ず治してあげられる。

…そんな、夢のような希望に縋らなければ、立ち上がれなかったというのもあったのかもしれない。
俺は必死に自分へ言い聞かせて、双機銃を握った。


***


「意外と強かったんだな」

アドルフの背を追って走り始めたらしいコウを思いながら、ぼそりと呟く。
しばらくは俺の傍で硬直していたものの、意外にも彼は、あっさり俺へ見切りをつけると
急いでこの場を離れていった。

あの平和ボケした男の事だ……俺の傍から離れられなくなるんじゃないかと危惧したものだが、
余計な心配だったらしい。


「いや…それとも馬鹿なのか」


…多分、馬鹿の方だろうな。
あまりにもしっくりきすぎる考えに、笑いそうになる。

幸せな脳みそをしている男だ。
気持ちを切り替えたのではなく、きっと本気で俺を助けられると考えたのだろう。
本気でそんな未来を信じたからこそ、この場を離れていったに違いない。


だが逆に、そんな馬鹿だったから…前へ進む事ができたとも言える。

ならばきっと、これから先も大丈夫。
今日、目の前で知人である俺の死を見る事が辛くても、きっとコウには再び笑える日がくるだろう。
なんせ、アイツの傍には、お気に入りのアドルフがいる。
それは大きな心の支えになるに違いない。
俺がかつて惚れた女を亡くした時とは違って、コウにはいつか克服できる時が来る。

ああ、それでも涙に震えた声は、ほんの僅かに愛しい。

俺を失うのは、大の男であるお前にとって、泣くほど辛い事だったのか?
優しくしてやった事はほとんどなかったはずだが……
それでも、この男を泣かせるほどには好かれていたのかと思うと、
少しだけ悪くないと思った。

「恨まれて終わると、思っていたんだがな…」

結局最期まで、コウには俺の生き方を肯定してもらえるような友情を抱くことができなかったが、
いつ死ぬともわからない、広く浅い関係を築いてきた俺を、こんな風に惜しんでくれる程度には
心を繋ぐことが出来たのだろう。

惜しまれるというのも悪くはないなと、似合わない事を思った。

全身の痛覚が消える。
残された聴力が消えた時、それが俺の最期になるだろう。

そんな最期の最期で、コウの事を考えている自分に笑いが漏れた。
…認めたくないが、何だかんだと結局俺は、あの男に友情を感じていたのかもしれない。
それだけは、絶対ごめんだと思っていたはずだったのに。

「俺も随分、焼きが回った」

呟いた愚痴は、誰の耳にも届かなかった。


***


「コウくん…?!」

ヴォモスブロドシスと対峙する俺のちょうど反対側へ、コウが一歩遅れて駆けつける。
…思わず声を上げてしまうほどには驚いた。
彼にとって暁は大切な兄弟のような存在らしく、もうじき命を散らせてしまう暁の傍を
きっと離れられないだろうと思っていたのに。

「…何でそんなに驚くんだ」

コウが困ったように口にする。
まぁ実際、彼が駆けつけなければ、この訓練は時間切れで踏破失敗に終わっただろう。

残された制限時間はあと僅か。

コウが俺の元へ駆けつけなかったとして、それを責めるつもりは毛頭なかったが、
駆けつけてくれなければ全員の死が確定していた。
それを思えば、彼の選択は至極まともで、実に正しい。

…正しいが……これは、理屈で説明できる問題ではなかった。

「よかったのか?」思わずそう問いかけそうになって言葉を飲み込む。
コウの覚悟を決めた強い声に、彼はまだ、暁の命を諦めていないのだと悟る。
事実はどうあれ、それが彼なりの気持ちの切り替え方なのかもしれない。
今ここで、水を差しても仕方が無いだろう。

もっとも、そうまでして駆けつけてくれたところで、
そもそも時間内に倒せるかどうかは賭けでしかないが……。

俺も彼の希望に、レイズしたいような気になった。


「コウくん、ええもん持ってるやん?」


ちらりと、コウが手にした双機銃に視線を送る。
彼のその強がりは、単純な希望だけではなく、ちゃんと一発逆転の可能性を秘めた
現実的なものだったらしい。

「暁の銃だ。あまり扱い方は上手くないが―――…」
「マジで一発逆転の可能性あり、やね。
 俺がチャンス作ったる。ゆっくり落ち着いてフィニッシュ決めや!」

傷がかさんだために最後の一本になってしまったモノメイトへ口をつける。
…暁から回復手段をまき上げたのは正解だったなと内心思った。
体力が回復していくのを感じながら、怪鳥へと向き直る。

ここからは時間と体力勝負。

コウが確実にこの鳥を始末するために注意を引く。
残された時間のうちに、勝機を作る。
俺の体力が無くなれば、その時点で終わりだ。


地面を強く蹴り上げ、跳躍。
大きく怪鳥の頭上へ躍り出て、ダガーを振るった。
応戦する鳥の火の粉が頬をかすめる。
じゅわりと頬の一部が焼けて、ひりつくような痛みが走った。
けれど動きは止めない。

怪鳥が俺めがけてその猛威を振るう刹那……コウが手にした双機銃が
怪鳥の頭へ見事に印をつけて見せた。

「狙い、悪くないで…!」

ついた印へ向けて、攻撃を振るう。
鳥から発せられる炎の直撃が全身を焼くが、かまう事はない。


「コウくんッ!!!!」


必殺の一撃が、トリガーの合図。
黄色く目立つその印へ向けて、コウの手にする双機銃が火を噴いた。


「これで…トドメッ!!!」


鈍い発砲音が2連発。
怪鳥が盛大に耳障りな声をあげる。

……あと一息、だが落ちない。

これまでか…と、息をのんだところで、暁からまき上げたガンスラッシュの存在に気が付いた。
―――…正真正銘、これが最後の一手。

俺は粗悪なソレを意図的に暴発させるべく、手早く火薬の残量を確認して
一気に腕を振り上げた。

至近距離。
だが、今更巻き込まれる事に躊躇している余裕はない。
時間切れまで残りのメータはあと1ミリ。

振りかぶった手から、ガンスラッシュが離れていく。
金色に輝くトリガーが消失するより、ほんの一瞬だけ早く…
手榴弾となったソレが、怪鳥の頭上にヒットした。

ドンッ!!!!

恐ろしい爆発音に、全身が吹っ飛ぶ。
…やはり巻き込まれたか。
炎に焼かれた痛みしか感じない今の俺に、さらなる痛みを感じさせるくらいには
その粗悪品は強力な威力を発揮する。
俺は思わず瞳を閉じて、硬い地面に倒れ込んだ。


***


CONGRATULATIONS!

かつて一度見た、訓練踏破の合図を示すその文字に、俺は安堵の息をつくのも忘れた。
視界に浮かび上がるその文字の向こう側で、倒れ込むアドルフの姿にゾッとする。

「ぁあ…クリアやな、コウくん……無事か?」

声が無ければ、判断できなかったかもしれない。

「アドルフ…さん……?」

思わず問いかけてしまった。

まるで金糸のようだった髪は跡形もなく。
とても綺麗だった顔立ちは見る影もない。
ただそこには、赤黒く染まった肉塊が、アドルフの声をかりて、人の言葉をしゃべっていた。


――訓練終了手続きを開始します。しばらくお待ちください。


「待てるわけないだろ?!」

流れる機械的な声に思わず叫び返した。
訓練は既に終わったというのに……。
今すぐ助けなければ死んでしまう…!
そんなひどい重傷だ。

慌ててモノメイトを探すが、激戦の末、在庫は既に底をつき、
どこにも回復手段が見つからない。

いくらここがヴァーチャルだからといって、精神が死を認識すれば助けるのは難しいだろう。
ここでの死は、現実の脳死と同じだ。
暁のように、腕の神経が死ぬのとはわけが違う。


…そこまで考えてハッとした。

暁はどうなった?!
やはり彼の状態も、今すぐ助けなければ死んでしまうような状況だ。

慌てて遠く離れた暁へと視線を送る。
彼の下でドロリと流れる血の池に背筋が凍った。

「暁?! ちゃんと…生きてるんだろうな?!」

思わず叫ぶ。
…傍に近寄れないのは、もしかしたら目に見えて迫る彼の死が怖くて
確かめられなかっただけかもしれない。


「…テメェは、何て言えば満足なんだ?」


やがて、一瞬の間をおいて返ってきた暁の声に心底ほっとした。
…まだ、まだ大丈夫だ。

だが時間がない。

暁にしろ、アドルフにしろ……1分1秒が惜しい状態だ。
どうにかならないのかと必死に思案を巡らせる。

そこで、コツンとこの手に何かが触れた。


―――…スターアトマイザー。
最後に俺が掴んだ幸運。

自分だけでなく、周囲の人間を回復させられるそのアイテム。

「くそ、まだ縋れる希望があったじゃないか…!」

興奮で背筋がゾワリと粟立った。
折角終えた訓練も、終了手続きの間に命が終わってはたまらない。
だが、これさえあれば、しのぐ事が出来るだろう。

「スターアトマイザーが残ってる! 必ず助ける!」

叫ぶ、その声に……無情なアドルフの声が問い返した。



「どっちをや?」



…え?
思わず問い返しそうになった。
だって、スターアトマイザーは周囲の人間を回復させられる貴重なアイテムだ。
だから二人を同時に助ける事も可能なはずで―――…

「間抜けな話やけど、俺はもう動けん。
 暁とは距離が離れすぎてる。
 二人同時にその恩恵にはあやかれんやろうな」
「なんだ死亡フラグ、ヤッパリお前、フラグを立ててたんじゃねぇか」

あきらめとも取れるような声。
そんなアドルフの声に、暁が世間話をするように、馬鹿にしたような声で言った。

それはまるで、インターバルで会話をつづけているかのようにすら錯覚する。
見た目に反して、声だけは何の異常もないかのように発せられるから……
本当に、夢なのではないかと思ってしまいそうだった。


「コウ、お前が決めろ。
 生かしたい方を選んで蘇生しな」


息をのむ。
その声は、やがて非情な選択を俺の前に突き付けた。
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名前 :コウ
人種 :ヒューマン/男性
メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
チーム8:Re:Monster(コモン)

ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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