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小説:09「その悪意から目を反らすな」

チャレンジクエストを題材にした二次創作小説第二弾。

ううう…こんなはずでは…。
思っていたよりずっと長引いてしまいそうで、テンポの悪さに頭を抱えている今日この頃。
ヤッパリ、プロのシナリオライターはすごいなぁと心底思います。

結末と発生する出来事は決めていて、残すところそのイベントもあとわずかだというのに、
思いの外書き出してみると長引いて参っています。
本筋と直接関係ない話を織り交ぜているのがいけないのかもしれませんが。

残り3話と前回言いましたが、もう少し続くかもしれません。
書きたくて溜まらなくて、初期から伏線を張っていた終盤のシーンまで、まだ到達できない。
もどかしいです。


↓↓ 折り畳み記事で小説本編へ


その約束が繋ぐ先
09:その悪意から目を反らすな


熱気が肌を焼く。
警戒していた割に、インターバルでは特に変わったことは起こらなかった。
勿論、またあのモニターから在庫管理のデータベースへアクセスしようものなら
その限りではなかったろうが……少なくとも、普通に訓練を受ける分には、
特に問題は起こらないようだった。

…もっとも、今この状態がすでに『普通』とはかけ離れているのだけど。


高低差のあるごつごつとした岩石地帯を飛ぶように走る。
過去に一度だけ通った、このエリアの最深部へと近づくたび……ドクドクと緊張で心臓が鳴った。
まるでそれが断頭台へ進む階段のように思えてしまって、俺は静かに息をのむ。

「コウくん、身体硬いで」

俺の考えている事を察したのか、アドルフが少し明るいトーンで声をかけてきた。
本当によく気の回る人だ。
俺は少しずつ息を整えて、苦笑を返した。

「コウくん、そういう顔ばっかりやな…」
「え? “そういう顔”…?」
「苦笑いっていうん? 素直に笑ろたらかわええのに」
「いや、あー……えっと…」

彼の気持ちがありがたいと思う反面、俺が反応しにくい場面や、
素直に受け取るにはちょっとマズイ言葉をたびたび選んでくるから
俺はついつい苦笑をかえしてしまうわけで…。

「…気遣ってくれてありがとう」

また苦笑を浮かべてしまいそうだ。
そんな俺につられたのか、アドルフも困ったように苦笑を返した。




「さて、最後の運試しといくか」

俺とアドルフが互いに苦笑したところで、暁が足を止め、俺たち二人を制止する。

最終ミッション開始から1時間。
前方に出現した支援物資の入っているコンテナはちょうど3つ。
1人に1つずつ、という事だろうか。
…確かに運試しだな、と内心思う。


ちらりと暁の表情を確認すれば、随分と歪んだ笑顔を浮かべていた。
「どうせろくなものは入っていない」……そう考えているのだろう。
『運試し』とはつまり、定められたアンラッキーを皮肉った言葉らしかった。

もっとも、そう考えているのはアドルフも同じらしく……
再び見た彼の表情も、苦笑のまま変わってはいなかったのだが。



「時間は惜しいが、とりあえずそれぞれ中身を報告しろ。
 期待してないが……万一ってこともあるからな」

俺達がそれぞれコンテナに手を伸ばしたところで、暁が熱のこもらない声で言った。
言葉以上に彼は、本当に中身に対して何も期待していないらしい。

「俺は簡易救急キット……要するにモノメイトやね」

特に異を唱えることなく、暁の言葉にアドルフが応える。
コンテナから中身をとりだして、モノメイトをプラプラとふった。
暁とアドルフ……双方が同時に「ヤッパリな」という表情を作ったのが少しだけ可笑しい。

「…次は俺の番かな?」

コンテナに入っていた物資を手に取りながらアドルフに続く。
どうせ同じくモノメイトだろう。
……そう踏んでいたのだが、意外にも幸運の神様は俺に味方してくれた。

「お……ちょっといいものだ」

幸運の神様……というには少し大げさかもしれないが。
コンテナから出てきたのは、急に進行ルートが変わったせいで、道中1つも入手できなかった
スターアトマイザーだった。
自分ひとりではなく、近くの人間の傷や状態異常を治す力を持ったそれは、
この状況だと、かなり“当たり”の部類だろう。
手にしたそれを二人の前に突き出すと、暁は意外そうな表情を作った。

「ほぅ…? 多少の運はあるらしいな。
 まぁ、お前程度の雑魚がここまで生き残ってるんだ、運はあって当然か。
 是非最後はその恩恵にあやかりたいもんだが、その運を使い切ってくれるなよ」

…相変わらず、素直な感想は延べられないのか。
その事に対して、今更異を唱えるのも馬鹿らしくなり、俺はさっさと話題を変えた。

「…それで君は何だったんだ?」
「手榴弾だよ」
「手榴弾?」

暁の言葉に、アドルフが首をかしげる。
フォトンを用いて戦う事が主流のアークスが、そんなものを使う事は非常に珍しい。
…というより、ほとんどない。
前線へ出ているアドルフでさえ耳慣れない言葉だったのだろう。
当然このチャレンジ訓練に出現する類の武器ではないはずなのだが―――…

「粗悪なガンスラッシュだ。
 こいつはすぐに暴発するおかげで、まともに使えやしねぇが、
 逆にわざと暴発させて手榴弾として使う手もあるってこった」

やはりか。
以前のチャレンジでは、暁のそんな機転のおかげで、無事最後のミッションを完遂させる事ができた。
俺はその時の事を思い出して、一瞬苦笑をこぼす。
……二度と世話になりたくないと思っていたが、まさかまたこの究極の場面で出くわすことになろうとは。

「それは…まともな使い方とちゃうやろ……」

前線に立てない俺はともかく、前線に立つアドルフでさえ思いつきもしなかった使い方らしい。
呆れたような、困ったような……そんな微妙な顔を作って、彼はもっともすぎる意見を口にした。

「生き残るために手段なんか選んでられるか」

きつく言い放つ暁に、アドルフは一瞬だけ悲しそうに眉をひそめる。

「…そんな使い方を平然と思いついてまうほど、キツイ世界におったんやな……」
「――――――…」

頭を強く殴られたような気になった。
暁は単純に戦闘慣れしていたから、武器の知識があり、こんな真っ当でない使い方も
知っていたのだと思っていたが……よく考えればアドルフの言う通りだ。
真っ当ではない使い方をしなければならないような場面に遭遇でもしない限り、
そんな知識は得られない。

思わず暁を見ると、彼は俺の表情から考えている事を瞬時に読み取ったのだろう…。
最高に不機嫌な顔を作って見せた。


***


―――…まさか、てめぇ程度が俺の生い立ちを憐れんでるんじゃないだろうな?

出かかった言葉を必死に飲み込んだ。
この言葉を言ったところで、きっとコウは真っすぐ肯定を返してくるだろう。
それがどれだけ人の感情を逆撫でる事であったとしても。
どれだけ侮辱している事なのか理解していても。
この男は自分が抱いだ素直な感情を、誤魔化したりはしないはずだ。

『君を心配している』

今実際に言われたわけではないのに、リアルすぎるほど彼の言葉が想像できる。
向けられる好意が心底不愉快だった。

コウはいつだって俺に対して真っすぐ言葉で、態度で、示してくる。
好きだ、好きだ、大切だと……何度となくソレは俺の心を揺さぶった。
けれど、なぜこうも……俺が大切なのだと示す癖に、俺の気持ちはお構いなしなのだろう。
彼の好意、思いやりは、俺の生き方の全否定だ。

いつ死ぬかもわからない世界で生きてきた。
それは勿論、到底楽だなどと言えるような世界ではなかったが、その世界で生き抜いてきた自分に、
俺は誇りを持っている。
過去に負った痛みも傷も、その全てが今の俺を作った要素だ。
その生き方を何一つ肯定せずに、ただ俺の命だけを気遣うコウは、
俺の生き方を理解する気が無いのだろう。

理解できないのではなく、する気がない。
押し付けられるコウの優しさという価値観には、吐き気がする。
結局この男は、自分の都合にそって俺を心配しているだけだ。
そんなものは好意とは呼べない。
もっとも、それを本人に突き付けたところで、そもそも俺の生き方を肯定する気がない男には、
改善など望めないだろうが。


…そこまで考えて、俺は心底ゾッとした。
何をここまで苛立つ事があるというのだろう。
普段なら何を言われ、何を思われたところで動じなかったはず。
事実、アドルフが一瞬見せた憐れむような表情に、俺は何とも思わなかった。

なのに。
コウの一方的な好意の押し付けだけが、気に入らなくて仕方ない。
…それはつまり、逆に言えば、俺はこの男に自分を理解してほしいと思っているという事だ。


以前訓練を共にしてから、俺自身、彼に対して多少思い入れがある事は自覚していたし、
それがかつて惚れた女に似た人間ともなればなおさらだろう。
けれどそれは、あくまで庇護対象としてのものだった。

アークスであり、俺より年上の成人した男であるこいつにとっては
屈辱でしかなかったかもしれないが……
事実守られるような腕前なのだから、文句を言われる筋合いはない。

兎に角俺にとってのコウは、守ってやらねばならない存在で、俺こそが主導権を握る役割だった。
決して俺の気持ちを理解してほしいなどと、対等な関係を築きたかったわけではない。


一人の人間に踏み込みすぎたその末路がどういうものか、嫌というほど知っている。
俺には互いを理解しあえる無二の親友など必要ない。
俺はこれ以上踏み込みすぎないよう、意識的にコウから意識を反らした。



「期待通り、状況を変えるほどの劇的な物資は無しだ、先に進むぞ」



再び足を進めると、背中にコウの視線が突き刺さった。


***


「暁はほんま、かっこええなぁ……」

前方を走る暁に視線を向けながら、自嘲がこぼれる。
この極限状態がそうさせるのか…それとも単に、俺が彼のような人間を沢山診てきたからなのか、
兎に角ポーカーフェイスのつもりらしい彼の表情からは、驚くほどにその内面が見て取れた。

暁は自分の弱点から決して目を逸らさない。

それがどれほど自分にとって都合の悪い事であったとしても、きちんと状況を理解し、
対処しようと考える。
自分の弱さと向き合う強さ……それは俺にない強さだった。

そんな彼を見ていると、少しだけ勇気がもらえるような気がしてくる。

……直に対面するであろう敵に対して意識を集中させていく暁に対し、
俺は全く別の方向へと思考を巡らせた。


俺達がこの訓練の真相に触れてしまった事は、訓練内容の改変……
および、コウが氷塊へと変わった事から、黒幕である何者かに筒抜けになっている事がうかがえる。
ではそんな俺達を、黒幕であるこのステーキ工場の主は、簡単に逃がしたりするのだろうか?

自分ならまず、そんな失態は犯さない。

だが現状、おそらく可能であるはずの……
システム管理者として俺達をすぐに始末するような結果は出す気がないようだった。
そうやって全身の感覚を一気に殺し、ステーキへ加工する方がはるかに効率的だというのに。

となると、何か他に目的があるのではないだろうか。

おそらく、黒幕にとってコウは不要な存在なのだろう。
既に一度、彼をあっさり氷塊へ変えた事からその事は簡単にうかがえる。
では目的は暁か?

……それも微妙に違う気がした。

彼はチャレンジ訓練で生計を立てる身で、半ば一般人からは認識されない層の人間だ。
すぐにステーキへ加工してしまったところで、黒幕にとっては何の痛手もありはしない。

それどころか、生かしておけばデメリットしかないだろう。
黒幕とて、ここで知りえた情報を、まさか俺達が黙っているなんて呑気な事を考えるとは思えない。
暁のように発言権が皆無に等しい立場の人間なら、仮にこの訓練で知りえた真実を叫ばれたところで
握りつぶす事も容易だろうが…結局生かしておいて面倒になる事には変わりなかった。

ではなぜ、何が理由で俺達をすぐに殺さない?

この訓練で確実に殺しておきたいはずなのに、
俺達をすぐに殺してしまうと都合が悪い何かがある。
それは一体なんだ?


そこまで考えて、思考を打ち切りそうになる自分を必死に押しとどめる。


『俺達』…?
違うだろう。


……やはり暁は強い。
真っすぐ自分と向き合う難しさに、俺は思わずため息をつきそうになった。
俺自身、他人を気遣い、その思考に思いを馳せ、その善意を汲み取る事は得意だという自覚があったが、
それが誰からのものであっても、自分へ向いた悪意と向き合うのには勇気がいる。

自分の弱さ、向けられた悪意に気づかぬふりをする事は驚くほど容易かったのに、
それと向き合う事がこれほど恐ろしい事だったとは。


この異常な訓練が続く目的が何であるのかは知れないが―――…
原因はおそらく、彼らではなく俺にある。


「おい死亡フラグ野郎、一つ大事な事を訊きそびれた」
「金髪も大概やったけど、その呼び方なんとかならへんの?」

俺が思考に意識を集中させ始めたところで、前方から暁の声が飛んできた。
意識は最深部の主へ向けたまま……彼は俺の抗議に一切応えず、言葉をつづける。

「お前、この夢いっぱいなステーキ工場の管理データへアクセスする権利はどうやって手に入れた?」
「それはどういう意図の質問や? 工場長にでも当たりをつける算段か?」
「いや…?」

訓練という皮をかぶった臓器製造工場のデータベース。
そのアクセス権の入手経路なら、別に特別なことは何もなく、単純に前線医療基地の
メインコンピューターに記されていたものを拝借してきただけだ。
隠すような事は何もないし、俺達のような最前線勤務のメディックなら、
誰でも入手できた情報だろう。
そこからこの訓練の黒幕を探し出すのはむつかしいような気がした。

いや、そもそも今そんなものを見つけたところで、俺達にはどうしようもない。
ヴァーチャル空間にいる限り、文字通り手の出しようがなかった。
それにもし、何らかの形でその人物を特定できたとしても、俺達にその人物を裁く権利はないだろう。
それは組織としての決断で、個人の手に負えるような代物ではない。

ではなぜ、彼はそんな無駄な質問をするのだろうか。


「いざという時、お前に頼っても安全なのかって質問だ」
「どういう意味や?」
「お前には言ってなかったかもしれないが、俺の右腕は動くだけで感覚が無い。
 今は随分調子もいいが、いつ何の切っ掛けで調子が狂うかわからないからな。
 怪鳥とのダンスは俺が引き受けてやるが、いざって時にお前がソイツを落とせるのか確認したい。
 言っとくがコウはクソの役にも立たないぞ」
「あんまりコウくんいじめたりなや…」

思わず苦笑を返す。

「―――…で、その質問は俺の戦闘技術についての質問とはちゃうな?」
「ああ、お前を信用しても大丈夫なのかって質問だ」
「…難しい質問やね」

丁度その事を考えていたところだ。
勿論、俺自身に彼らを裏切るつもりはない。
だが、この異常な訓練に隠された目的が俺にあったとするならば、俺の意思など関係なく
システムは平然と邪魔をしてくるだろう。

「コウも大概だが、お前も無自覚に地雷を踏んだ口か」

悪意に聡い暁は、俺が必死に巡らせた思考を、いともたやすく導き出した。
その強さが少し、うらやましい。

「…かもしれへん」
「優しいお医者様ってのは皆そうなのか? 悪意に対して鈍感すぎる」
「耳が痛いで…」


俺が踏み抜いてしまったらしい地雷。
この訓練は、一体俺に何をさせようとしているのだろう?
俺は暁の質問にはっきりとした答えを返せないまま、もう一度意識を思考へ沈ませた。
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ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
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マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
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