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小説:03「歪む境界」

チャレンジクエストを題材にした二次創作小説第二弾。
メンテ中なので、ちょっと早いですけど続きおいておこうかな、と。

舞台のモデルは、一時期バグが発生していたチャレンジ…通称「始動(ハード)」なんですが
ショップが使えないという形を、今回のような表現に変えてます。
前作よりオリジナル要素が強い分、書いてて楽しいものではあるのですが…。
PSO2である必要はあったのか? と、葛藤する日々…。


↓↓ 折り畳み記事で小説本編へ


その約束が繋ぐ先
03:歪む境界


「…どういう事だ……?」

火山エリアを抜けて、第一のインターバルへ入ると、暁はその表情を驚愕の色に染めていた。
薄暗い空には光り輝く星が点在し、今の時刻をハッキリ夜だと告げている。

…惑星リリーパの砂漠地帯。
場所そのものは、以前訪れた時と全く同じまま、何も変わっていないというのに
時間帯は全く別のものになっていた。

『イ、イイイ、インター…バ、ル…エリア、に…なな…りま、』

ノイズのかかった声が、言い終わらないうちにブツリと途切れる。
夜の砂漠の影響か、足元からせりあがってくる冷気に小さく身体が震えた。
以前は照りつける日差しの熱さを感じたものだが、今日は全く逆だ。

…訓練開始直後のナベリウスは、以前と全く変わらなかったのに?

僅かな疑念が脳裏をかすめたところで、暁が苦々しく言葉を吐いた。



「ここは…4番目のインターバルだ」



…え?
思わず彼の顔を見つめ返す。
軽く物資調整が出来るワゴン車にかかった砂埃を払った。
そこには確かに「4」という数字が刻まれている。

「どういう事だ?」
「俺が訊きたい。…だが、生存者ゼロのカラクリは読めたな」

この訓練を受ける前、暁が言っていた不穏な言葉を思い出す。
曰く、最近のチャレンジは様子がおかしい。
訓練を受けた者が、ベテランを含んでいたにもかかわらず、誰一人として生還していないという事実。
その理由は、この訓練プログラムが狂っているからなのか―――…?

ミッション2をクリアしたところで4番目のインターバル。
すなわち2時間後に始まるのは、中間のミッションをすっ飛ばし、いきなり8番目のミッションだ。
並大抵の人間ではクリアできると思えない。


チャレンジ訓練は、訓練者全員にシステム的な負荷がかけられる。
結果として、俺のようなメディックの力は全て封じられ、たとえ怪我をしようとも、
現地調達のアイテムだけで訓練を完遂させなければならなくなった。

訓練は、単純な戦闘能力を計るものから始まり、次いで判断能力、現場適応能力と、
これら3つの要素が繰り返し試されるわけだが、その性質上、現地調達できる物資の質は決まっている。
この訓練…戦闘能力にしろ判断能力にしろ適応能力にしろ…
必要最低限の物資で、どこまでやれるのか、というのも課題の一つになっているらしい。

つまり、平時なら簡単に手に入るものが、ここではなかなか手にできない。
その「必要最低限」というのがネックだった。

訓練の途中、支援物資として武器や治療キットが手に入るコンテナがおかれてはいるものの、
それは全てミッションに合わせた質のもの。

ミッション2までに入手できた粗悪な物資で、これから先、いきなりミッション8を行くのであれば
相当な難易度の高さになるだろう。
…元から高い難易度が、さらに跳ね上がることになる。
背中にゾクリと悪寒が走ったところで、ようやく出口からアドルフが姿を現した。

「お? 夜景か! ロマンチックでええやん!」

緊張感も何もないのは、彼がこの訓練の内容を知らず、今のコレが異常事態であることに
気が付いていないからなのだろう。

「コウくん顔色悪いで? 寒いんやったら温めたるからおいで、おいで」

そう言って距離感ゼロのアドルフは俺を後ろから抱きしめる。
…おいで、と言ったわりに、自分からやってきた。
ヴァーチャルだというのに、伝わる彼の体温と鼓動が温かい。
少しだけ気持ちが落ち着いた。
昔見たアニメ映画の、白いマシュマロのようなケアロボットを思い出して、少し笑える。



「お前……戦闘面は問題ないんじゃなかったのか?!」

そんなアドルフの呑気な言動に苛立ちを含ませて、暁はようやく合流した彼に詰め寄ると
盛大に睨みを利かせた。

「何だ、さっきの注意の引き方。お前みたいにクソな囮は今まで一度も見たことがない」
「しゃーないやん、そうせなコウくんにウィンクでけへんかったんやし」
「主にそれがクソだっつってんだよ!」
「なんや嫉妬か? 今度は暁にウィンクしたろか?」
「お前……ちゃんと俺の言葉が通じてるんだろうな?」

あまりに会話がかみ合わなくて、流石の暁も頭痛がするらしい。
結局は怒りではなく、疲労と困惑の表情だけがその場に残る。
珍しく暁が言い負かされた。
…言い負かされた、というと、かなり語弊がある気もするが。

「…とりあえず、状況を整理しよう」

インターバルの時間はたった2時間しかない。
まさか自分がこの場を取り仕切ることになろうとは思いもしなかったが、
俺はそう言って咳ばらいを一つした。

「おっしゃ、式の段取りやな! コウくんはいつが都合いい?」
「え? 式?」
「俺らの結婚式やん! 婚姻届けはもう書いてるから、あとはコウくんが書いたら終わりや!」
「いや、あの……」
「状況整理っつったら、訓練の内容に決まってんだろうが!」

ゲシッと、鈍い音が鳴る。
ついに暁の足が、盛大にアドルフの尻を蹴りあげていた。

「ぎゃひん! あっ…意外とこういうのもありかも?」
「コイツはほっといて先に進めるぞ」

戦闘訓練を幾度となく積んだ暁の、何の遠慮もない蹴りは、一応の配慮か
ダメージの残りにくい部位への攻撃だったにしろ……見るからに痛そうなものだったというのに、
痛みに一瞬大きく飛び上がったアドルフは、そのまま床に倒れて一人、恍惚の表情を浮かべている。
そんな彼と、何も言葉をかけられないでいる俺を気にも留めず、暁は真っすぐ俺に向き直った。


「コウ、お前何か隠してるだろ」


急に自分へ矛先が向いてドキリとする。
視線を逸らすことさえ許さない瞳が、俺の心の奥底を見抜くように言葉を紡いだ。

「…どういう意味だ?」
「訊き返す時点で確定だがな。
 顔色こそあまり良くないにしても、この現場にお前は動揺しなさ過ぎている」
「……別に動揺していないわけではないし、隠し事はしていない。
 君に喋っていない事があるにしても、おそらく今の状況とは何の関係もないと思うぞ」
「それは内容を聞いてから俺が決める。話せ」
「随分横暴だな」
「話したくないなら、話したくなるようにしてやってもいいんだぞ?
 5分あれば、すぐにでもお前を丸裸にしてやれる」

そう言って暁は武器にもカウントされないような、小さなサバイバルナイフを取り出すと、
ぽんぽんとその柄を叩いて、俺に見せつけた。
…最終的には暴力に物言わせるつもりらしい。

「エロテクなら俺も自信があんで!」
「お前は黙ってろ!」

話を混ぜっ返すアドルフを再び蹴り上げる。

「やめてくれ、アドルフさんがかわいそうだ」
「コウくん……好き!」
「あー…お前の場合はそうだな、自分より他人を傷つけられた方が話したくなるか?」
「別に話したくないとは言ってない! ただ…君はいい顔をしないだろうなと思っただけで」
「言ってみろ」

有無を言わせない暁の瞳に、俺は観念して当初の目的を告げた。
喋ればおそらく暁はいい顔をしないだろうから、できれば彼には黙っていたい内容だったが…時間も惜しい。
別に事情を話したことで、起こるであろう彼との問答が面倒なだけだ。
内容自体は知られて困るという話ではないのだし、
これから先、暁の協力も必要になる可能性はあるのだから、仕方ないかと観念する。


・・・・・・・・・。


「―――…踏破が目的ではない、か」
「…ああ。だから正直、この訓練が狂っていようが、俺にはあまり関係がない」

俺の最大の目的は、暁の腕から広がる神経破損の理由を探り、解決する事。
そのために、この訓練プログラムの不可解な謎を解明しようとしていた。

暁が腕を失くしたのは、このチャレンジ訓練がプログラムの異常を引き起こすよりも前。
だから今の異常とは特に関係ないと思っていたし、俺の考えが正しければ、
訓練が狂ったところで、管理システムにアクセスさえできれば、
おそらく無事に訓練を終えられるだろう。

この2時間でその答えに辿り着けなければヤバいというプレッシャーはあるものの、
正直、訓練そのものに対してのヤバさは感じていなかったのかもしれない。
それがおそらくは、暁に「隠し事をしている」と疑念を持たれた理由だろうか。

「確かに面白くはない話だったが―――…あながち今の状況と全く無関係とも言えなさそうだ」

しかし暁は、俺の認識とは違い、僅かに表情を曇らせた。
もっと俺の自分勝手な考え方に毒づかれると思っていたのだが、彼の興味は他の部分に移ったらしい。
今度は俺が疑念を抱く番。
暁は、俺が知らない何か別の情報を持っているのではないだろうか?

「で? 肝心のシステムへはアクセス出来そうなのか?」
「あ……いや、試すのはこれからだ」

暁に問いただそうとして、しかし彼の言葉が優先だと頭を切り替える。
問う事はいつでもできるが、管理システムへアクセスできる時間は限られていた。

この世界がヴァーチャルリアリティである以上、現実から器具の持ち込みはできない。
暁の嗜好品のような、たばこやナイフは別だろうが……機材を持ち込んで訓練を受ければ、
不正をする気でいることが一発でバレる。
そんなもの、システムが許してくれるはずもない。
となれば、もともとヴァーチャル内部にあるものを使うしかないだろう。
俺はタイムリミットが表示されているインターバルエリアのモニター前で、
管理者のメンテナンス用に付属されているキーボードを叩く。

画面からプツリとタイマーが消え、全体が不安なほど黒く染まった。
やがて、緑色の文字がいくつも画面に表示される。

タイマー表示を消しただけで起動するとは思いもしなかったが……
一応、これが管理システムらしい。
だが、少しずつ羅列されていく文字に、やはりか、と…俺は苦い顔で唇をかんだ。


Enter passphrase (empty for no passphrase):


「パスワードを入力します」と出た画面で、俺はキーを叩く手を止める。
システムにアクセスするためには、当然だが管理者パスワードが必要らしい。
ためしに何も入力せずに実行キーを押してはみたが、無反応。
どうしたものかと頭をひねる。


正直、ヴァーチャル内のコマンドならば、さほど凝ったものにはされていないだろう。
マザーシップの存在を揺るがすようなシステムならばいざ知らず…
細かいメンテナンスの必要な場で、長いパスフレーズは設定しない。
そもそも外部からの持ち込みが制限されている場で、メモを持ち込めるとも思えない。
長すぎるパスは覚えるのにも限界がある。
だから現場を見れば、何かヒントがあるのではと期待していたのだが……甘かったか。

…そもそも、自分の命さえ揺るがしかねない訓練で、簡単に管理システムを起動できれば
無傷でこの訓練を終えてしまえるのだから、それでは訓練の意味がない。
簡単にわかるようなパスワードが設定されていないのは当然の事だったのかもしれない。

だが…簡単にわかるようにされてはいないのだとしても、そう難しいものではないのは確かだ。
少なくとも、ヒントも無しに覚えられないようなコードではあるまい。

ためしに、アークス本部から配布されたメディカルセンター勤務の者しか知らない
パスコードを入力してみる。
……無反応。
流石にどの部署もパスワードが同じ、などという事はなかったか。

「パスワードは?」
「わからない…」
「んだよ、使えねぇな」
「俺は別にメカニックでもなけりゃ、ハッカーでもないからな」
「威張るなよ」
「威張ってない。君だって見当もつかないんだろう? お互い様だ」

悩んでいても時間はどんどん消費されていく。
こうなったら可能性のあるものをどんどん打ち込んでいく他ないか……。
ジワリと焦りが足元からせり上がる。

最悪、この訓練を無効にする方法だけでも突き止めなければ、
今のこの狂った状態では、真面目にヤバいかもしれない。
当初、インターバルに入ればなんとかなると考えていた手前、
覚悟していなかった恐怖が、徐々に俺の精神を蝕んでいく。

残り時間は1時間10分ほど。
じわじわと迫りくるタイムリミットに思考が定まらなくなった瞬間。




「船酔い」




後ろで床に転がっていたアドルフが、いつの間にかこちらを見つめ、静かな声でそう言った。

「……え?」
「2741……フナヨイで覚えや」

どういうことだ?
急に真面目なトーンで話されて、俺は訊き返したくなる衝動を必死に抑える。
今はそれよりも先に、確認しなければ―――…


Enter passphrase (empty for no passphrase):2741


アドルフの言うコードを打ち込み、実行キーを押す。
瞬間……一気に文字が流れ、画面全体が白く染まる。
やがてしばらくののち、読み込みを終えたが画面が、無数の動画ファイルと文章データを吐き出した。

「何だ…これ……」

アクセスしたのは管理システムのはずだ。
けれどこれはまるで―――…

驚愕するのもつかの間。
多数あるそのファイルの中から、見慣れた文字列が目に留まる。


S_暁(良好)


簡素なファイルにつけられた人名は、おそらく今目の前にいる暁その人のデータだろう。
なぜ暁のデータが?
どうにも嫌な予感で鼓動が早くなる。

「開け」

一瞬躊躇した俺に構わず、暁は低い声でそう言った。
震える手でフォルダを開く。

その様子を、アドルフはいつになく真剣な目で眺めていた。
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名前 :コウ
人種 :ヒューマン/男性
メイン:Te/Su
Ship :10(現在8に旅行中)

チーム10:Rosen Kreuz(マネ)
チーム8:Re:Monster(コモン)

ガンナーに憧れつつ、
主にテクターやってます。
サブFoからSuに転向しました。
メインとサブクラスLV.80!
他クラスLV.75!

マトイちゃんとリリーパをこよなく愛す、
ファッションショーとSS撮影が
メインと化しているエンジョイ勢。

最低限迷惑にならない程度のプレイを
心がけつつ、楽しんでます。

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